ティール組織での採用方法は?
自社の改善において、慣例的な従来の組織形態が本当に適しているのか、近年問題視され始めています。
そこで注目をされているのが、上司の干渉なく、チームが自主的に自社を発展させていけるティール組織です。
今回はそのティール組織での採用方法について、選考基準や成功させるためのポイントを解説していきます。
ほかの組織モデルとの比較や、それぞれの適正、選考のプロセスなどをふまえ、基本的な仕組みも改めて確認しましょう。
チーム自ら採用を主導するのが特徴
ティール組織では、採用もチーム自ら主導するのが大きな特徴です。
基本的に従来の組織では、採用は人事部の管轄となります。
人事部内の基準によって選考されるため、実際に配属された際、お互いにギャップを感じてしまう場合も少なくありません。
しかし、ティール組織での採用の場合、基本的に選考はチームのメンバーによって行われます。
つまりメンバーの中で、具体的に今、現場にこういう存在が欲しい、という人物像がはっきりするということです。
人事部と相談することはありつつも、大体の場合、最終的にチームのメンバーが主体となって決定します。
また、採用人数に縛りがない場合も多いため、ピンと来る人物がいなければ、無理な採用をすることもありません。
ほかの組織モデルの採用方法とはどう違う?
ティール組織は、組織やチーム内での動きが主体となります。
それでは、他組織モデルの採用方法とは、どのような違いがあるのでしょう。
他組織モデル全体の印象として、慣例であったり、受け継がれてきた文化を大切にしていたりする傾向が強いです。
また、その組織独特のルールや、印象的な特徴も多くあるように感じます。
他組織のメリットも取り入れていけるよう、他組織モデルそれぞれの特徴を押さえつつ、比較していきましょう。
グリーン(多元型)組織との違い
グリーン(多元型)組織の特徴は、今まで自分たちが築いてきた文化を守ることに重点を置いている点にあるといえます。
「家族」とたとえられることもあり、上司と部下という階層文化は残しつつ、自分らしさが尊重されるといったメリットがあります。
また、組織にどれくらい適合しているか、能力よりも、組織と価値観の近い人材を求める傾向が強いです。
ただ、上司の権限がどう組織内に影響するのかに関して、特に決まりはありません。
そのため、所属するメンバー内で意見のすり合わせに時間がかかってしまう、というデメリットがあります。
個人の意見は尊重されるものの、メンバー内で意見がまとまらない場合など、最終的な決定権は上司にあるのです。
オレンジ(達成型)組織との違い
オレンジ(達成型)組織の特徴は、効率やパフォーマンス、業績に重点を置いており、組織構造がわかりやすいことです。
「機械」とたとえられることもあり、成果をあげることで、出世できる仕組みになっています。
一定ノルマ以上の働きが、インセンティブとして反映される仕組みもこの形態であり、メリットの1つといえるでしょう。
階層文化は残しつつも、基本的には知識、スキル、ともに能力の高い人材を求める傾向が強いです。
ただ、変化や競争も激しいため、結果のために盲目的に働き続けてしまい、心身に支障をきたしやすいというデメリットがあります。
現代社会での働き方に関する問題は、この組織形態が大半を占めており、改革のための運動も進んでいます。
アンバー(順応型)組織との違い
アンバー組織(順応型)は、社会での立ち位置に重点を置き、家柄や階級によって就ける仕事は決まっていることが特徴です。
「軍隊」とたとえられることもあり、出身や家系によって就ける仕事は決まっています。
学歴についても、ある一定の基準を満たしていないと、昇進に上限が発生する場合があります。
厳格な階層文化により成り立っているため、指示命令系統が明確で、役割のまっとうできる人材を求める傾向です。
メリットとして、個人の役割をまっとうすることが重視されるため、負担がかたよることも少なく、安定した組織を継続することができます。
ただ、環境に大きく左右されます。
状況によっては、組織の継続が不安定になったり、難しくなったりするデメリットもあるのです。
レッド(衝動型)組織との違い
レッド組織(衝動型)は、上司と部下が強い信頼関係を築くことに重点を置いていることが特徴です。
「オオカミの群れ」とたとえられることもあり、上司は部下に強い忠誠心を求める代わりに、いざというときには盾となります。
こちらも階層文化ではありますが、上司と部下のあいだに強い信頼関係が成立していることを条件とします。
そのため適宜、上司への忠誠心を試すような過程が設けられる場合もあるようです。
メリットとして、すべてにおいて圧倒的な上司に従属することで、メンバーの安心を約束する形態が維持できます。
しかし、それはときにデメリットともなります。
なぜなら視野が狭くなってしまったり、個人に負担がかかってしまったりすることもあるからです。
ティール組織ではどのような基準で採用をする?
他組織のモデルの特徴をふまえたところで、ティール組織ではどのような基準で採用をするのでしょうか。
ティール組織では、採用にあたって、後述する3つの適性に重点を置いて選考していきます。
選考過程においても、採用者、応募者のお互いがより、相手の素の部分を知れるような工夫が必要です。
ここからは3つの適性について、ティール組織の採用過程で選考する側(チームメンバー)が意識すべきこともあわせて解説していきます。
業務への適性
他組織と同じく、ティール組織でも募集する職種や分野に対して、知識や経験、スキルが適しているかを精査します。
たとえば、システム管理できる人材の募集に、パソコンスキルがまったくない人を採用することは、現実的に難しいです。
どんなにそのほかの適性を満たしていても、メインとなる業務が最低限できないと、その分採用はきびしくなります。
しかし、ティール組織において業務はもちろん、採用に関してもチームが主体となっていくセルフマネジメント組織です。
組織自体流動的な動きになることも多く、さまざまな分野に対し、マルチに対応ができることは強みになります。
そのため、他組織に比べると、業務への適性に対する選考の比重は、そこまで重くないともいえるでしょう。
組織への適性
ティール組織の大きな特徴でもあり、もっとも重視しているともいえる、組織との価値観や相性の良さを精査します。
上司の干渉が少ない分、実際に業務を進めていくうえで、チーム内で相談することや、判断していくことが常です。
つまり、メンバー同士がお互いに気兼ねなく、意見を言い合える環境が必要になってきます。
業務はもちろん、チームとして波長を合わせていくことに関しても、価値観の違いは大きく影響します。
そのため、実際に採用した場合を想定し、仮採用やインターンのような実践的テストを導入している企業も多いです。
一概に価値観といっても、文化的な面・業務に対する姿勢・考え方などさまざまであるため、特に時間をかける部分になります。
存在目的(エボリューショナリーパーパス)への適性
存在目的(エボリューショナリーパーパス)とは、進化する目的、存在する目的という意味で使われています。
ここでは、組織が存在する目的や意味を理解し、自身とどのようにリンクしているのかを精査します。
つまり組織のどこに惹かれ、なぜ入りたいのか、また実際にどのような貢献ができるかといったところです。
組織として発展を目指す中で、目的や方向性に関して、どのように理解し、共感しているのかは重要です。
自身と組織の目指す場所が違えばずれが生じ、チームで動いている以上、業務に大きく影響する可能性があります。
そのため選考の段階で、自身と組織の方向性のすり合わせは、どれくらいできているか見極めることが必要になるのです。
ティール組織での採用を成功させるためのポイント
自社の向上と発展、そのために最高のチームで業務へ取り組んでいきたいのが本音だと思います。
お互いに高め合っていけるようなメンバーを集める第一歩が、人事採用です。
ここからは、採用ティール組織での採用を成功させるためのポイントを押さえていきましょう。
採用にあたって、組織はどんなところに注意して選考を進めていけば良いのでしょうか。
具体的な選考方法をあげながら、実際にどのような効果があるのか解説していきます。
トライアル期間を設ける
トライアル期間とは、いわゆる試用期間のことを意味しています。
その内容はインターンのように決まった期間、実際の業務に参加するもの、交流会のようなものなど、形式はさまざまです。
書類選考や面接だけでなく、このような実践的な選考方法を取り入れることで、お互いに大きなメリットがあります。
採用側は、実際にコミュニケーションを取りながら、応募者の人柄や、どんな人物なのかを知る機会になるのです。
それは応募者側も同じで、実際の仕事内容や業務形態が合わなかったり、または想像以上のやりがいを感じたりするかもしれません。
選考を通してシミュレーションを取ることは、お互いの相性を効率良く確かめられる、絶好の機会といえるでしょう。
オンポーディングを実施する
オンポーディングとは、いわゆる研修プログラムのことを指します。
新しく採用することになったメンバーの受け入れから、実際に環境へ馴染み、主戦力の一員となるまでの施策です。
採用が決まると、まずグラウンドルールと呼ばれる、組織・所属チームの初歩的なルールや流れについてレクチャーを受けます。
存在目的や、基本的な価値観をふまえルールが決められていること、ミーティングに工夫を凝らしていることが多いです。
気兼ねなく意見が言い合える職場環境を作ることで、チームでの取り組みがスムーズになるよう考えられています。
ティール組織でのオンボーディングでは、先述した3つの適性についても学べるよう、多くの時間をかけているのが特徴でしょう。
フィードバック・評価の仕方を工夫する
ティール組織でのフィードバック・評価が他組織と大きく違うところは、管理職ではなくメンバーによって行われるということです。
従来のフィードバックと差別化をはかり、より良く、新しい力にしていくため、3つのポイントに従って進めていきましょう。
1つ目は、相手の立場になって思いやりをもって接することです。
評価する、されると考えると、どうしても会話の中に上下関係が生まれてしまいます。
ここでは評価として答えを導くような形ではなく、相手の立場に寄り添い、面談のような形で進めていくと良いでしょう。
2つ目は、主観的な意見を述べ合うことです。
評価する立場となると、一般的に「客観的な意見を述べるべきだ」と言われています。
しかし、ここではあえて主観的な意見を述べ、相手の気持ちを引き出してあげるように進めていきましょう。
3つ目は、数字だけで評価しないことです。
自分の達成度など、数字で評価や指摘をするのではなく、一緒に考えていく形をとるようにしましょう。
組織でどんなことができたか、どのような方向に向かっていきたいか、相手の気持ちや考えを尊重し、引き出していきましょう。
まとめ
以上が、ティール組織での採用方法について、選考基準や成功させるためのポイントの解説になります。
近年増えてきているとはいえ、従来の慣例化された文化の残る組織が多い中、まだまだ手探りな部分が多いと思います。
しかし、メンバーの自主性を育てたり、コミュニケーションを大切にしたりするこの組織体制は、新しい風を吹き込ませることでしょう。
今回は採用の観点からの解説でしたが、働き方改革も視野に入れ、ポジティブに検討していくのも良いのではないでしょうか。