はじめに
これまで中途採用メインで行ってきた企業が新卒採用をしたら、思ったよりコストが高かったというケース、今までより採用人数を増やしたら、かなりコストがかかったというケース、新卒採用のやり方を変えたらコストが大幅に増えてしまったというケースなど、新卒採用のコストが想定よりも高い時、コストを抑える方法はあるのでしょうか。
新卒採用の相場感、採用コストの定義、コストカットすると起こる問題を踏まえながら、 コストカットするための5つの方法をご紹介します。
新卒採用の相場感は?
新卒採用の相場感は、どのくらいでしょうか。
企業にもよりますし、やり方などにもよりますが、平均して、1名あたり60~100万程度が相場です。
思った以上に多いと感じる方、そんなものだろうと感じる方、企業担当者によってもそれぞれの反応があるでしょう。
1名でそんなにかかるのと思われますが、新卒を採用するには手間も時間もかかります。
どんな仕事や職種に何人採用して、どう育てるのかといった育成計画を立てたうえで採用計画に落とし込まなくてはなりません。
応募条件や待遇を考えて求人概要を作成し、必要に応じて採用サイトを制作するためや就活サイトへ出稿するための原稿作成を行う人件費や制作費用、サイト利用料もかかります。
書類選考、面接など多くの人材を割き、外部業者の手を借りるなど、トータルすると多くの費用がかかるのです。
採用コストの定義
新卒採用の相場感は1名あたり60~100万程度で、そこには人件費や各種ツールの制作費、外部サービスの利用料や学生との電話やメール、郵送などの通信費などさまざまな費用が含まれています。
もっとも、採用コストはどこまでを言うのでしょうか。
採用コストの定義も見解がさまざまあり、1人あたりの採用単価、採用するために必要な人件費、入社後の活躍まで含めて定義する場合もあります。
採用コストにもいろいろあるため、コストをカットしたいなら、今の課題がどこかを把握することが大切です。
1人あたりの採用単価
採用コストを定義するうえで、代表的なのが、1人あたりの採用単価を考える方法です。
採用全体にかかったコストで評価するのではなく、1人あたりの採用コストを考えます。
採用サイトの制作費用や就活サイトへの利用料など、採用人数に関わらずかかるコストもありますが、1人あたりに換算して求めます。
もっとも、採用サイトなど一度制作すれば、あとはメンテナンス費用や更新費用で済むものは、制作年度を除けば、1人あたり単価への影響は下がります。
この点、1人あたりの採用単価は採用人数に応じて費用は上がり、採用人数が減れば費用も下がることになるのが基本です。
無駄な採用をせず、各部署に確認を取って必要最小限の採用をする方法か、採用人数の調整ではなく、かかる費用を抑える手段を考えることが必要です。
採用するために必要な人件費
採用コストの定義として、採用するために必要な人件費も含める考え方です。
採用のために直接支出された費用だけでなく、採用に携わった人の業務に費やされた人件費をコストとして換算します。
採用するにも人が必要になり、社内で多くの人材が長い時間、採用業務に取り組むことになります。
採用計画を立てたり、ミーティングを行ったり、各種資料を作成したり、学生とのやり取りをしたり、書類選考をしたり、面接会場を準備して面接を実施するなど多くの時間が費やされるわけです。
人事担当者や現場担当者、役員などの給与や報酬を時給換算するか、その平均単価を用い、それぞれが採用業務に携わった時間の合計をかけて人件費の総額を求めます。
採用する単純な費用だけでなく、関わった方の人件費も採用コストに含む方法です。
入社後の活躍
採用コストの定義として、入社後の活躍まで含める方法もあります。
採用時や教育でかかったコストを、入社後の活躍によって回収することも、採用コストに関係してくるのが大きな特徴です。
採用は今後の将来性に対する初期投資のため、回収することも念頭に置いて新卒採用は考える必要がありますので、この採用コストを検討する企業は少なくありません。
入社後の活躍によるコスト回収を踏まえた採用コストを考える場合、早期離職は大きな問題となります。
たとえば、わかりやすくするために、たった1名を採用するとしましょう。
入社するまでに支出した採用コストが60万円とし、入社後の1ヶ月は研修のために人件費として30万円分を使いました。
にもかかわらず、1ヶ月で辞めてしまったらどうなるでしょうか。
本格的な活躍をまったくせずに辞めても、1ヶ月分のお給料や社会保険料は払わなくてはならず、25万円を支払いました。
トータルで115万円を出費しており、まったく回収できなかったので、赤字となります。
赤字にならないためには、離職を防ぎ、活躍できる環境整備も欠かせません。
現状よりもコストを下げる方法
思ったよりかかる新卒採用コストを抑えたい場合、どのようにすれば良いのでしょうか。
採用コストをどのように定義するかにもよりますが、現状よりもコストを下げる方法として5つをご紹介していきます。
その5とは、利用するサービスを変更する、リファラル採用に力を入れる企業の認知度を向上させる、離職率を下げる、入社後の研修を整えることです。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
利用するサービスを変更する
現状よりもコストを下げる方法の1つ目は、利用するサービスを変更することです。
現在、多くの企業が新卒のエントリーのために外部の就活サイトなどを利用しているのではないでしょうか。
また、人材紹介会社などを利用しているケースもあるかもしれません。
複数の就活サイトを利用していて、ほとんどエントリーが得られないサイトがあった場合や反応が薄いサイトがあるなら、そのサイトの利用を止めることで、利用料などがカットできます。
人材紹介会社の場合は成功報酬制とはいえ、良い人材を紹介してこない会社のスタッフとやり取りするだけでも、人件費の無駄遣いです。
コストパフォーマンスの良いサービスにシフトしていくことが望まれます。
リファラル採用に力を入れる
現状よりもコストを下げる方法として、リファラル採用に力を入れることも一つの手段です。
リファラル採用とは自社の社員に、能力ややる気がある知人を紹介してもらう採用手法のことです。
社内のことをよく理解している社員が、自社に合いそうな知人を紹介するので、入社後のミスマッチが起こりにくいと言われます。
また、トラブルメーカーを誘えば、紹介した社員の立場も悪くなるので、有能な人材が得やすいです。
集客するのに費用がかからないので、コストダウンにつながります。
新卒採用の場合、家族や親族、知り合いの子供といった身近な関係者だけでなく、出身校の後輩、ゼミやサークルの後輩などOB、OGとしてのリファラル採用が可能です。
すでに活躍している社員と同じ学歴やゼミという点で、一定のレベルや能力があると担保されるので、採用もしやすくなります。
詳しくは「リファラル採用」もご参照ください。
企業の認知度を向上させる
現状よりもコストを下げる方法として、企業の認知度を向上させることも目指しましょう。
認知度向上とコストダウンは、一見結びつかないかもしれません。
ですが、企業の認知度を上げることで、ナビ媒体を活用した採用コストの間接的な削減が可能です。
企業の認知度が上がれば、就活サイトなどに企業名で検索してアクセスする人が増え、エントリー者も増えます。
エントリー者が増えることで、より優秀で自社にマッチした人材を採用できるようになり、入社後の活躍による回収期間の短縮も期待できるようになるのです。
ただし、認知度を上げるために露出を増やす必要があり、宣伝広告などにかかるコストは増えます。
それでも、いったん認知度が上がれば、その後は宣伝広告費用を抑えられ、エントリー者が増えて有能な人材を採用しやすくなることで、長期的に見て採用コストの削減につながります。
離職率を下げる
現状よりもコストを下げる方法として、離職率を下げることも大切です。
直接、採用コストを下げるわけではありませんが、入社後の定着率を上げることで、投資した採用コストの回収が確実にできるようになっていきます。
早期に離職するほど、採用コストを回収できないばかりか、回収コストという側面でいえば、理論上は赤字になります。
せっかく入社しても回収までに退職してしまうと回収もできなくなるため、離職率を下げることで間接的にコスト削減につながるのです。
そのためには、離職率を下げ、定着させるにはどうしたら良いかを考え、働き方改革や働く環境の整備、モチベーションの維持ややりがいのある仕事と適正な評価と待遇といった施策も行っていかなくてはなりません。
入社後の研修を整える
現状よりもコストを下げる方法として、入社後の研修を整えることも必要になってきます。
これは離職率の低下とも関わり、投資したコストの短期回収や確実な回収にも大きく影響するものです。
充実した研修をしっかり行い、早期に一人前となって、能力を発揮してもらえるようにしましょう。
早くから成果を上げてもらうことで、コスト回収のスピードも速くなり、間接的ながらも、採用コスト削減につながるからです。
研修制度を整えることや各部署との連携など考えること、環境を整えることは複雑ですが、成果を上げ始めると自走できるようになります。
手離れを早くすることも考慮して、研修を整えるようにするのが望ましいです。
コストカットすると起こる問題
採用コストのカットの方法を5つ提案してきましたが、やり方を間違えた場合や極端にコストカットを急ぐと問題も生じます。
コストカットすると起こる問題も理解したうえで、そうならないようにしたいところです。
コストカットすると起こる問題の代表的なものは、「コスト意識が高くなり、誰でも採用しようとする」こと、「採用に関わる人数を削減する」ことで負担が増すことや採用の質が担保できなくなることです。
詳しく見ていきましょう。
コスト意識が高くなり、誰でも採用しようとする
コストカットすると起こる問題の一つが、コスト意識が高くなり、誰でも採用しようとするようになることです。
単価を下げることだけを考え、能力を無視した採用を実施してしまうというリスクがあります。
なるべく、手間や人件費をかけず、外部コストもかけずに採用できれば良いと、社員が連れてきた人は誰でも採用する、低コストなハロワークや大学の就職課に求人を出して応募してきた人を即採用するなど、採用プロセスの質が落ちてしまうおそれがあります。
今後の成長を踏まえた新卒採用になるため、コストだけを見るのではなく、能力まで見たうえで採用を行わなくてはなりません。
特に新卒は、経験者の中途採用と異なり、経歴や職歴を見て能力を推し量ることは難しく、面接やインターンなどを通じて、じっくりと確認しないと、本当の能力ややる気、会社とのマッチ度が見えてきません。
多少コストが上がっても、入社後に回収できれば問題ないので、採用にある程度の人件費や時間をかけることは仕方がないと割り切ることも大切になってきます。
採用に関わる人数を削減する
コストカットすると起こる問題として、採用に関わる人数を削減する傾向が強まるのもデメリットです。
採用コストを人件費に置くことや長い期間も費やす新卒採用に多くの人材を割くのは無駄、業務効率が悪いなどとして、極少人数のスタッフだけに行わせてしまうと、弊害が生じます。
担当する一部のスタッフだけに大きな負荷がかかり、オーバーワークになる場合や中には有能なスタッフが離職してしまうおそれもあります。
また、一部のスタッフだけの偏った見解で選考が行われてしまうおそれも否めません。
能力や性格などバランスの良い採用ではなく、同じような傾向のある人材ばかりが集まってしまうなど、多様性に欠けてしまうおそれも生じます。
少人数で採用を行わなくてはならず、十分な選考ができずに、採用する人材の質が落ちてしまうおそれもあります。
人材や人件費をカットしすぎることで、新卒の質が落ちれば、かえって回収コストがかかるなど、結果として採用コストの増大につながるので注意が必要です。
まとめ
新卒採用のコストが想定よりも高いと感じた時に、コストカットするための5つの方法として、利用するサービスを変更する、リファラル採用に力を入れる企業の認知度を向上させる、離職率を下げる、入社後の研修を整えるが考えられます。
関わる人数を削減すれば人件費は抑えることができますが、1人にかかる負担が大きくなり、正確な判断がつかなくなる可能性があります。
こちらも投資と考え、リソースは十分確保したうえで採用を行うことが大切です。