はじめに
新卒採用といえば、経団連などの号令などに伴い、同じ時期に同じような流れでスタートするというのがこれまでの基本ルールでした。
しかし、最近は横並びではなく、自由度が高まり、通年採用をするケースも増えています。
通年採用とはどのような採用の仕方で、どんなメリット・デメリットがあるのか、どのような企業が行っていてどのような企業におすすめなのか、今流行りの通年採用を採用コンサルタントが解説していきます。
通年採用とは
通年採用とは、年間を通じて企業のタイミングで採用活動を行うものです。
中途採用については、一般的に通年採用形式で必要に応じて求人を募って個別に選考を進めていく流れがあります。
通年採用という場合、基本的には新卒採用の新たな形を指しており、これまでの新卒一括採用とは異なり、就活の時期を限定せず、企業が採用を行いたいタイミングで新卒を募集して選考していきます。
新卒一括採用との違い
通年採用は、いつ開始するかは決めずに年間通して採用活動を実施するスタイルです。
これに対して、新卒一括採用は企業の連合団体である経団連などを中心にルールを定めているもので、「3月解禁、6月選考開始」という決まった時期に採用を行うものとなっています。
ルールといっても基本的には紳士協定ですが、経団連加盟の大手企業をはじめ、中小企業でも同じ時期に同じ流れで行うのが一般的です。
就活生の間では、この時期に就活するという慣習ができあがっているため、ほかの時期に新卒を採用しようと求人を出しても、応募者がほとんどいない事例は少なくありません。
新卒一括採用の時期より遅ければ、すでに内定が決まっているなどで応募者がなく、早すぎてもほかの企業の内定が出ると内定辞退が起こるためです。
通年採用のメリット
企業が新卒一括採用を行うのではなく、通年採用を行うメリットはどんな点でしょうか。
時期を限定せず、通年にわたって新卒の採用活動を行う企業としてのメリットは、学生を慎重に選考することができること、留学帰り、部活引退後などの学生の採用ができることが挙げられます。
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
学生を慎重に選考することができる
通年採用のメリットの一つが、学生を慎重に選考することができることです。
新卒一括採用の場合、就活の開始時期や選考時期、内定を出して良い時期などが決められています。
そのため、ほかの企業と足並みを揃えないとなりません。
じっくり選びたいからと時間をかけていると、なかなか選考が進まない、内定が貰えないと学生が不安になり、ほかの企業に流れてしまう場合やほかの企業から内定をもらって、自社への就活を辞めてしまうリスクがあるからです。
通年採用を導入して、学生もそれを受け入れれば、スケジュール関係なく選考をすることができ、時間をかけて学生をじっくりと見極めることが可能となります。
留学帰り、部活引退後などの学生の採用ができる
通年採用のメリットの2つ目は、留学帰りの学生や部活引退後の学生を採用できることです。
日本は春の卒業、海外は秋の卒業の学校が多いため、留学をしたことで就活時期に乗り遅れてしまう学生も少なくありません。
強豪の部活などで活躍していた学生も、引退後から就活を開始するなどして、それ以外の学生に比べて不利になるケースがあります。
こうしたスケジュール通りに就活できないけれども、優秀な学生の採用がしやすくなります。
留学によって培われた語学力やグローバルな感覚を持った優秀な学生や根性があり、努力を惜しまない部活で鍛えられた学生の採用ができるメリットがあるのです。
就活生の縛りなく接触可能になる
近年多いパターンは、大学3年生よりインターンシップなどで接触を図り、時期に応じて施策を打ち出し、選考フローへと乗せていくことが関の山となります。
しかし通年採用およびインターンシップを行っているケースは、大学1年生より長期インターンなどで雇用し、都度内定だしを行う企業も増えてきております。
また新卒に限らず、◯◯歳以下として採用活動を行うケースもあり、既卒・第二新卒問わず、優秀であるか。自社にフィットする人材かという観点で、採用活動を行う場合もあります。
通年採用のデメリット
では、通年採用のデメリットはどんな点でしょうか。
通年採用が流行とされる一方で、まだまだ一部の企業しか行っていないのは、デメリットのために踏み切れない企業が多いためです。
通年採用の主なデメリットとしては、学生の滑り止め対象になること、採用のための工数がかかること、学生数の多いタイミングで乗り遅れることが挙げられます。
学生の滑り止め対象になること、学生数の多いタイミングで乗り遅れることは、多くの企業で新卒一括採用が行われていることの裏返しです。
採用のための工数がかかるのは、通年採用ならではのデメリットです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
滑り止め対象になる
通年採用のデメリットの一つである、滑り止め対象になるというのは、新卒一括採用を行う企業がまだまだ多いことに影響を受けるものです。
学生の就活の場合、中途採用と異なり、今すぐ入社したいと応募するのではありません。
どのタイミングで就活を行い、内定を得たとしても、入社するのは大学を卒業して以降です。
たとえば、新卒一括採用より早い時期に内定を出す場合、まずは通年採用の企業で内定を獲得しておいてから、新卒一括採用の就活を行って内定を獲得し、比較検討することができます。
内定承諾や辞退の判断は入社ギリギリまでできるので、まだ大学を卒業していない学生の場合、就活時期がズレた通年採用の企業と新卒一括採用の企業を天秤にかけることが可能です。
工数がかかる
通年採用のデメリットの2つ目は、工数がかかることです。
これは新卒一括採用の影響で生じるデメリットではなく、通年採用ならではのデメリットです。
新卒一括採用の場合、一定のスケジュールに沿い、人事担当者や面接官となる人材をフル稼働させる必要がありますが、一定期間に集中し、1回の期間で終わります。
これに対して、通年採用は募集をかける都度、同じ工程を実施しなくてはなりません。
たとえば、年に3回新卒を募集するなら、3回にわたって求人をかけ、応募を募り、書類選考を行い、数回の面接を経て内定を出すというプロセスを経なくてはなりません。
新卒一括採用なら1回で済むプロセスが、通年採用で採用をする回数だけ発生するため、工数だけでなく人件費や時間、採用コストなどがかさみます。
学生数の多いタイミングで乗り遅れる
通年採用のデメリットの3つ目は、学生数の多いタイミングで乗り遅れることです。
多くの学生は多くの企業が新卒の募集をかける、新卒一括採用の時期に就活を行います。
これに対して、通年採用を導入した企業は、あえて新卒一括採用の時期を外して、じっくり選考をしたい、就活の時期がズレてしまう優秀な学生を得たいと考えているのです。
新卒一括採用の就活時期より早ければ、まだ準備していない場合や早すぎて気づかれず、応募者が出ないおそれがあります。
遅ければ、すでに就活を終えていて応募者がいないか、内定を得られなかった能力の低い学生が応募してくる可能性もあるでしょう。
留学経験者を採用したいと思っても、必ずしも留学経験のある優秀な学生がいるとは限らず、思っていた採用ができないおそれもあるのです。
こんな会社は通年採用をすべき
通年採用に注目する企業は増えているものの、実際には移行することなく、従来通りの新卒一括採用の就活時期に採用活動を行っている企業が多いです。
では、どんな会社なら通年採用に向いているのでしょうか。
こんな会社は通年採用をすべき企業として、大きく3つが挙げられます。
1つはネームバリューがある会社、2つ目は人事の人数が多い会社、3つ目は優秀層を採用したい会社です。
ネームバリューがある会社
通年採用を導入すべき会社の代表例が、ネームバリューがある会社です。
ネームバリューがあり、多くの就活生が入社したいと志望する会社の場合、就活時期を問わず、応募者が殺到する期待が持てます。
一括採用の就活時期より早ければ、我先にと応募してくるでしょうし、遅くなっても、すでに獲得した内定を辞退してでも入社したいと応募してくるに違いありません。
ネームバリューのある会社に入社したいと思っている学生は、自らその会社の求人情報にアンテナを張っており、求人が出たタイミングで応募したいと狙ってくれます。
そのため、時期を問わず、求人を出せば学生が応募してくる可能性のあるネームバリューのある会社なら、通年採用を行っても、より自社にマッチした人材を取捨選択するのに十分な数の応募者が見込まれます。
人事の人数が多い会社
こんな会社は通年採用をすべき例の2つ目は、人事の人数が多い会社です。
通年採用の独自のデメリットとして、工数がかかる点が問題となりました。
つまり、年間に何度も採用機会があることで、工数や手間、時間がかかります。
そのため、人事の人数が少ないと手が回らず、常に採用活動を行っている場合や募集したいタイミングで、前回の選考がまだ終わっておらず、募集ができなくなるといった弊害の発生も否めません。
これに対して、人事の数が十分にいれば、担当者をグループ分けするなどして、1年に何度でも新卒採用をスムーズに行うことが可能です。
優秀層を採用したい会社
こんな会社は通年採用をすべき3つ目の例は、優秀層を採用したい会社です。
他社と横並びで競い合いながら学生の取り合いをする場合、他社に遅れて内定を出すと学生が自社の面接をキャンセルするなど、優秀な学生を取り逃がしてしまうおそれもあります。
これに対して、あえて時期をずらすことで、他社を気にせず、じっくりと自社にマッチした人材を選考することが可能となります。
また、留学から帰ってきた学生の中には、すでに新卒一括採用で内定が出された後に帰国する学生も少なくありません。
留学経験のある学生は単に語学力が高いだけでなく、MBAを取得していたり、IT系や化学系の研究をして帰国したりと、優秀な学生が少なくありません。
そうした学生へのニーズが高い企業であれば、通年採用を導入するメリットがあります。
まとめ
通年採用とは、新卒一括採用のように他社と横並びで採用活動を始める時期や選考期間や内定を出すスケジュールを決めるのではなく、年間通して採用活動を実施することです。
通年採用のメリットとして、学生を慎重に選考することができる、留学帰り、部活引退後などの学生の採用ができる点が挙げられます。
一方、通年採用のデメリットは滑り止め対象になること、工数がかかること、学生数の多いタイミングで乗り遅れることです。
通年採用をすべき会社としては、ネームバリューがある会社、人事の人数が多い会社、優秀層を採用したい会社が挙げられます。
これらのことを踏まえて、通年採用を考えてみてください。