はじめに
自社の人材を確保するには、新卒採用と中途採用があります。
中途採用は、ある程度社会人としての経験を積み、基本的なビジネススキルはすでに身につけている即戦力を対象としています。
新卒とはまた異なった採用フローがあり、選考を行う時期や利用する求人媒体にも差はありますが、中途採用ならではのポイントも押さえておかなくてはなりません。
そこで今回は、中途採用の戦略をどのように立てていくべきか、ふまえるべきポイントと一緒にご説明いたします。
採用戦略とは?
現在は少子高齢化が進み、労働人口の減少が大きな社会問題になっています。
そのため、人材不足にあえぐ会社もたくさんあります。
その中で自社に必要な人材を確保するために計画するのが、採用戦略です。
会社の中期経営計画や事業計画をもとに採用戦略を立案することで、安定した人材確保が期待できます。
逆に中朝的な視点を欠いた採用戦略では、十分な人材を確保できなくなるときが必ず来るでしょう。
会社の経営を常に安定させるためにも、よく練られた採用戦略は必要不可欠です。
中途採用を行うメリットは?
新年度を迎えると同時に、新卒の新入社員が入社してきます。
その一方、中途採用は採用が決まれば、いつでも入社が可能です。
しかし、すでにどこかの企業で働いてきた経験があるため、その企業のやり方が身にしみついていることもあるでしょう。
また、採用された時点で若くなければ成長にも限りがあるかもしれません。
給与に関しても、新卒の新入社員と同じというわけにもいかないでしょう。
それでも中途採用を行うメリットはどこにあるのか、中途採用のメリットについてまとめました。
即戦力を獲得しやすい
中途採用の一番のメリットは、即戦力が獲得しやすいことです。
前職でも同じような業務に就いていたのであれば、入社した当日から現場で活躍してもらうことも可能です。
採用の時点でその人の経歴やスキルはわかっているので、その人の能力が十分発揮できる職場を選んで配属するのも、難しくないでしょう。
基本的なビジネススキルも身についているので、入社後の基礎研修は必要ありません。
加えて、同じ業界で働いていた人材であれば業界についての説明も不要です。
これが新卒だと、入社後の基礎研修は、少なくとも1ヶ月は必要になるかもしれません。
中途採用なら、そのような手間とコストとは無縁です。
人材がひっ迫しているのであれば、中途採用で人員不足を補うのがおすすめです。
選考時期を比較的自由に調整できる
中途採用は、選考時期を比較的自由に調整できます。
そのため、新規事業のスタート時や急な欠員が出たときなど、必要なときに採用活動を行えるというメリットがあります。
これが新卒の場合は、大学などの卒業時期が春と秋に集中しているため、学生のスケジュールに企業側が合わせなければなりません。
入社式や採用活動の解禁日まで、あらかじめ決められています。
しかし中途採用であれば、新卒採用より融通がきくので、自社が必要なときに、必要な募集をかけられます。
適宜人材を確保できるのも、中途採用の大きなメリットといって良いでしょう。
しかし、後述しますが採用戦略を立てるうえで、中途採用に有利な時期と不利な時期があるのでご注意ください。
自社にないノウハウがある人材を得られる
中途採用で獲得できる人材は、それまで別の会社で大いに活躍してきた人材です。
そのような人材は自社にはないノウハウをもっている可能性があります。
自社で抱えている課題の解決に、中途採用された社員がもっている知識やスキルが役立つかもしれません。
また、別の業界での経験がある中途採用の社員の視点は、自社の社員にとっては、とても斬新で考えもしなかった気づきを与えてくれる可能性もあります。
逆に中途採用がまったく行われない現場は閉鎖的になりがちです。
毎日同じことを繰り返すばかりで、成長が見込めないこともよくあるのです。
今までなかったノウハウを取り入れ、現場の風通しをよくするためにも、中途採用の社員は貴重な存在といえるでしょう。
中途採用はどのように戦略を立てていく?
それでは、中途採用の採用戦略はどのように立てていけば良いのでしょうか。
もっとも重要なことは、自社が置かれた状況を冷静に分析し、客観的な問題点を洗い出すことです。
それから自社の目標と現状が、どれほどかけ離れているのか確かめてください。
大きくかけ離れているのであれば、早急に状況を改善させなければなりません。
その理想と現実の隔たりを埋めるための人材に、何が必要なのか考えれば、採用戦略も自然と定まってくるのではないでしょうか。
まずどのような人材が必要かを整理する
中途採用を成功させるには、自社にとって、どのような人材が必要なのかをはっきりさせなければなりません。
採用は企業が自身を成長させるために行うものである。
自社にとってプラスにならないのであれば、中途採用の意味はないといっても良いでしょう。
しかし、自社にとって必要な人材と一口にいっても、即答できる社員はなかなかいないはずです。
それが自社にとってどのような人材か整理するためには、最初に自社の現状について知らなければなりません。
現時点で自社が抱えている問題点や目標と現実のギャップを理解し、現在足りていないもの、さらなる成長に必要なものを洗い出してください。
それを埋められる知識やスキルをもった人材が、今自社で一番必要としている人材です。
人材は会社にとって一番重要なリソースともいえます。
どんなに立派なインフラを整えたとしても、それを有効に活用できるだけの能力のある人材がそろっていなければ、会社は成長できません。
採用時期が重要
新卒の採用は経団連によって解禁日が決まっています。
その一方で、中途採用は通年で採用が可能です。
しかし、中途採用でも人が集まりやすい時期と、反対になかなか集まらない時期があります。
したがってコストを無駄にしないためにも、中途採用に有利な時期をねらって採用活動を行うのがおすすめです。
一般的にボーナス時期は人材を集めにくい傾向があり、反対に9月や3月は人材が比較的集まりやすい月とされています。
上半期が終わる前に今の職場に見切りをつけて転職したい、もしくは4月から始まる新年度から心機一転頑張りたいと考える求職者が増えるからでしょう。
転職を考えて動く人が多い時期であれば、有能な人材に出会えるチャンスが増え、応募も集まりやすくなります。
ペルソナも立てる
有能な人材を求めているのはどこの会社でも同じですが、有能の定義は会社によって異なります。
採用活動を行うには、どのような人材に来てほしいのかペルソナも立てましょう。
ペルソナを立てるとは、求人条件や募集に至った事情をふまえて、会社が欲している人材のキャラクターを設定することです。
まるで実在する人物のように人柄や経験を設定することで、応募者への理解が進み、どんな課題を抱えて、何を求めて職探しをしているか把握できるようになります。
ペルソナを立てるか立てないかで、採用活動がうまくいくかどうか決まるという側面もあるので、必ず立てるようにしましょう。
効果的な採用方法もわかってくるので、自社にとって有能な人材を獲得できるチャンスが増えます。
採用手法を選ぶ
中途採用が決まったら、採用手法を選ばなければなりません。
それぞれの手法によってメリットとデメリットが異なるため、採用方法の選定には注意が必要です。
たとえば、求人サイトであれば見てくれる人は多いですが、競合他社の求人情報も同時に閲覧できるため、どれだけの人が興味をもって見てくれるかは不透明です。
ほかの会社との差別化をはかるために内容にこだわりたい場合は、求人サイトに掲載されるまで、さらに時間がかかることを覚えておきましょう。
一方、ハローワークは費用がかからないという大きなメリットがあります。
しかし、基本的に地元の情報しか求人が掲載されない、見てくれる人も少ないなどのデメリットも考えられるので、よく検討した方が良いでしょう。
自社の社員から知人を紹介してもらうリファラル採用は、近年注目されつつある採用手法です。
こちらもコストはかかりませんが、似たような人材が集まって多様性が生まれないおそれもあることが、リファラル採用のデメリットとしてあげられます。
中途採用を行う際のポイント
中途採用を行う時期と採用手法が決まったら、実際に採用活動を開始することになります。
もちろん、ここでも押さえておくべきポイントがあります。
たしかに企業側は求職者を選ぶ立場にありますが、本来であれば両者のあいだに上下関係はありません。
どのような求職者でも平等に、そして丁重に対応しなければならないのです。
組織としても個人としても恥ずかしくないような対応を心掛けてください。
相手が将来自社にとって重要な人物になる可能性もあることを、肝に銘じておきましょう。
長期休暇の前後には注意
中途採用は通年行えますが、お盆やお正月などの長期休暇の前後は、特に注意が必要です。
選考中に長期休暇が入ると、長期にわたって選考がストップしてしまうことになります。
結果、先行期間が長くなってしまい、選考辞退へつながってしまうおそれがあるからです。
求職者の多くは同時に複数の会社の選考を受けています。
自社の選考が長期休みを挟んでストップしているあいだに、ほかの会社との選考が進み採用されてしまったら、優秀な人材をむざむざと手放す結果になるかもしれません。
選考辞退が出てしまったら、その分採用活動はやり直しです。
そのため、採用選考のあいだに長期休暇を挟まないのが得策です。
自社のためにも求職者のためにも、採用選考は長期休暇を挟まず、スピーディーに行いましょう。
求人原稿も文言に気をつける
インターネット上などに載せる、求人原稿の文言にも気をつけなければなりません。
そもそも求人原稿の文言は、求職者の目に留まり、魅力を感じさせなければ意味がないのです。
どのような人材の層に向けて情報発信するのか、その層に属する人たちのニーズも理解して、原稿を作成する必要があります。
ここで必要なのは単なるキャッチーな文言ではありません。
同業他社との違いがわかりやすく、自社ならびに担当してもらいたい業務の具体的で詳細な説明です。
多くの人の目に留まるだけではなく、「もっとこの会社について知りたい」と思われるような求人原稿を作成してください。
同業他社の求人原稿に埋もれてしまうような原稿ではなく、数値情報なども適宜掲載して、訴求力のある内容に工夫しましょう。
応募資格の設定も重要
どのような人材を集めたいかによって、応募資格の設定も変わってきます。
まず必須条件と必須ではなくても、歓迎する条件をはっきり分けてください。
求職者も自分が応募資格を満たしているかどうか気にしているはずです。
必要な資格と、そうでないものは混ぜないようにしましょう。
また、応募資格の項目が多すぎるとかなり求職者を限定してしまうことになります。
項目数は、ほどほどにした方が良いでしょう。
資格が必要な業務であれば、その資格は必須条件となりますが、それ以外の資格については、自社内で検討を重ねることがおすすめです。
経験年数で区切るのも、あまり良い方法ではないでしょう。
その人のもっているスキルは、経験年数には関係ない場合も多いからです。
面談は人と人の出会い
書類選考を経て実際に求職者と合う面談は、採否を決める場というよりは「人と人の出会い」の場です。
面接官は会社の顔として、応募者に失礼がないよう、歓迎する気持ちを出して、向こうが自社を受け入れられるようにしましょう。
選ぶ側であるからといって、高圧的な態度に出てはいけません。
応募者に自社に反感をもたれてしまえば、選考辞退という事態を招きかねないのです。
逆に歓迎していることが応募者に伝われば、モチベーションが上がり、採用が決定したあとも気持ちよく出社してもらえるはずです。
その日に面談があることを周知しておけば、応募者をスムーズに迎えられます。
伝達ができていないばっかりに放置されたまま待たされたら、応募者の心も離れてしまうでしょう。
まとめ
中途採用を行う際、まずは採用戦略を立てなければなりません。
どういった人材が自社にとって必要なのかをはっきりさせ、採用活動を始める時期にも工夫が必要です。
それぞれの採用手法にもメリット・デメリットがあるため、自社の実状に適した手法を選んでください。
新卒採用と違って、中途採用は通年で行うこともできますが、求職者が集まりやすい時期を選ぶとコストの無駄を最小限にできます。
面談でも、人と人とのコミュニケーションを大切にしましょう。