採用市場の変化やオンライン化に伴い、従来の採用方法でだけでは対応しきれないと、新しい手段をご検討されている会社も増えてきております。今回はどんな手法と選ぶ前段階の、採用マーケティングについてご紹介していきたいと思います。
採用マーケティングとは?
採用活動にマーケティングの手法や概念を取り入れることで、競合他社との差別化を図ったり、人材獲得の強化を行う方法になります。今後労働人口が減っていく中で、就職活動や転職活動をしている顕在層だけでなく、活動以前の潜在層を獲得していくことで、安定的に採用活動をし人材の確保を目指すために取り入れられている手法です。
まずは一連の流れをご紹介していきたいと思います。
認知から活躍において、対象者の行動(どのよううな気持ちになるのか・したいのか)を想定し構成や戦略を立てていくことが採用マーケティングになります。
従来のリクルーティング方法との違い
今までの採用活動は、顕在層に向けての採用活動がメインとなってきました。そのため、既に市場にいる人材に向けてリーチすることが重要とされていました。というのも今までの採用市場において、新卒であれば経団連に沿った情報解禁があったり、転職であればある程度、時期感おいて狙いを定める事ができていました。
しかし現在、新卒では早期化が進んでいたり、中途市場も採用が難航しております。その中でうまく候補者と接点を持つためには、活動以前から認知を取り、入社後の従業員満足度を高めていくことで、情報伝達が様々な方法で広がっていきます。
特に若手採用においては、Z世代が増え、従来のニーズとは変容してきました。そのため型の決まった採用活動を続けていても、以前と同様な成果が上がらない可能性があります。そのためにも、個々にフォーカスをしていけるような仕組みも必要になるでしょう。
採用マーケティングの基礎
採用マーケティングを始めるにあたって、何から始めればよいのか。それは基本のフレームワークである3C分析を理解することから始めましょう。
3C分析とは?
「市場(customer)」「競合(competitor)」「自社(company)」3つの頭文字です。採用においては、市場=候補者(candidate)を指します。
なぜ3Cが大事かというと、採用においては同業他社だけがライバルとなり得ないため、ある程度見立てした上で、自社を訴求していく必要があります。
自社(company)
まずは自社を知ることから始めましょう。自社理解を高める利点としては、大きく分けて2つあります。
1つ目は、ペルソナ設計ができることです。自社の考え方に対して、バックグラウンドから推測される価値観形成、事業方針に対して必要なスキル、そして社員の属性を踏まえて合うかなどを考察することができます。
2つ目は、自社の訴求ポイントを把握することができます。人によって魅力に感じるポイントは変わるため、ペルソナ設計した後にどのような点で魅力を感じるのかを推測し、自社にある要素を見つけていきましょう。
その際に以下の点を抑えておくと、進めやすいです。
- 企業理念、経営理念
- 事業計画・経営計画
- 社員の属性
- 業務内容 など
候補者(candidate)
次に候補者です。自社に必要な人材を言語化し、架空の人材を想定します。その際に大事なことは実在しそうなことです。例えば、営業力があり、英語が話せて、プログラミングも触れるなど要望だけを集めてしまうと、実在しにくい人物が出来上がってしまうため、母数の少ない人材のみにリーチすることとなり、採用成功から離れてしまいます。
また候補者となる人材も従来の顕在層以外にもありますので、後ほどご紹介していきます。
ペルソナ設計の詳細は、下記をご覧ください!
競合(competitor)
そして最後に競合他社を知りましょう。前述の通り、採用における競合他社とは同業他社だけではありません。設計したペルソナを元に、志向性によって見ている業界や職種、企業規模などを推測し、ベンチマークとして調べましょう。
またペルソナに近い社員へ、どんな会社を検討していたのかをヒアリングすることも一つ手段として有効だと思います。その際に応募・選考動機や比較企業、比較した際に決めた理由なども、自社の訴求ポイントになり得ますので、一緒に抑えていきましょう。
アプローチする人材の多様化
3C分析でもお伝えしたように、候補者を決めることは大事です。今までの採用活動において、顕在層飲みへのアプローチが多かったのではないでしょうか?
現在の採用市場から、潜在層へのアプローチに着手している会社もあります。具体的にどんな方を候補者として検討しているのか、ご紹介していきます。
自社の社員
俗にいうリファラル採用になります。自社の社員から候補者を探し、実際に入社へつなげていき採用活動を推進しているケースです。こういった場合は、社内向けのマーケティングが必要となります。例えば、エンゲージメントを高めるための施策である、社内報やコミュニケーションツールの利用、適材適所の人事異動など、満足度を高め、会社の顔として採用への協力を仰ぎましょう。
アルムナイ
アルムナイとは、採用マーケティングにおいては「退職者」を指す言葉として使われます。自社での再雇用、俗にいう出戻りと呼ばれるケースです。アルムナイの特徴としては、自社のカルチャーを知りつつ、他での知識やノウハウ、またスキルアップが望めるため、円満退職であれば即戦力として採用することが可能となります。
そのため採用マーケティングにおいては、退職までの設計が必要となります。会社の方針次第ではありますが、退職時の体験が悪い印象の場合戻ってこない可能性の方が高いため、退職後の関係値まで設計できるとより良い財産となります。
過去の応募者・不採用者・内定辞退者
採用マーケティング上では、過去の応募者・不採用者や内定辞退者も会社のフェーズやタイミングによっては候補者となり得ます。また他社でスキルアップしている可能性もあるため、採用当初と違った視点で接触することもできます。
しかしここにおいて大事なことは、2つあります。まずは「タレントプール」を仕組み化しておくこと。今まで採用活動で接触してきた方を、データとして残しておき、イベントや何かしらの仕掛けを持ってして接触を図ることで成り立ちます。
2つ目は不合格者の場合特にですが、不合格後の体験です。不合格通知をサイレントにしてしまったり、テンプレートのお祈りメールですと候補者が会社に対して、あまりよく思っていない可能性があります。そのため、不合格者へのフォローというのもある程度設計した上で、実施しなければなりません。
自社のファンを獲得
採用マーケティングにおいてのゴールは自社のファン獲得になります。前述した内容になりますが、今までの採用は「母集団形成をしその中から選ぶ」方法が主流でしたが、今後は「優秀な人材に選んでもらう」という流れに変わります。
そのためには3C分析のように、現在の自社を理解することと同時に、候補者およびターゲット層にとって「良い会社」に変わっていくことも重要です。
働き方改革や終身雇用の崩壊、コロナウイルスの影響による企業と従業員の変化など、外的要因でも令和時代は変化してきました。その中で企業の柔軟性や安定性が改めて見直されています。
また個人のキャリアも多様化し、複業の推奨やDX化によるスペシャリストの育成、組織体制の変容を行い、どれだけ企業として個人を考えられるかも求められてきております。
そういった世の中の変化もマーケティングの1つとして取り入れ、ホワイト企業・ブラック企業という概念ではなく、ステークホルダーより「優良企業」としての取り組みが必要となります。そこから「ファン」を獲得し、候補者にしていくことが採用マーケティングになります。
採用マーケティングの具体的なやり方
採用マーケティングは候補者が応募する以前のところから考え始め、入社した後の成果まで考慮すると説明いたしました。
そのため、ここからは項目別で具体的にどう考えていくのかをご紹介していきます。
下記5つのフェーズは一般的な採用活動と同じになるため、紹介は割愛させていただいております。
- 応募フェーズ
- 選考フェーズ
- 内定フェーズ
- 承諾フェーズ
- 入社フェーズ
認知フェーズ
認知段階では、自社を知ってもらうことです。会社・サービス・従業員などから、会社名を覚えていただくことです。例えば、メディア露出、広告、プレスリリースやSNS、オウンドラウンドメディアなど、広報活動から知っていただくことです。
興味フェーズ
興味は自社に対して興味がある段階ですので、より詳しい情報を出していきましょう。具体的には、社員紹介のブログや、インタビュー記事、採用広報ができるSNSなどが主流です。その際にペルソナに対して、どんな情報だしをするか、また採用のテーマや会社の理念など一貫性をもたせて情報発信することが大事です。
教育フェーズ
オンボーディングの構築が大切になってきます。いち早く会社に馴染んでいただき、入社後の不安やギャップを減らし、定着していただくための仕組みを作りましょう。
入社後の体験次第では、早期離職へ繫がってしまったり、口コミや風評被害を防ぐ効果もあります。
活躍フェーズ
活躍いただくことは、どの会社でも目標の一つだと思います。活躍いただくための教育機関もそうですが、一つは従業員満足度を高めることが大事です。これは良い体験を積んで頂くことによって、良い口コミやリファラル採用に繋がることはもちろんのこと、実例として自社ブランディングに繋がる効果もあります。
採用マーケティングを推進する3つのメディア
採用マーケティングにおいて、整理した情報をどうやって世の中に出すのかはとても大事です。その中でも大きな3つをご紹介していきたいと思います。
ペイドメディア
1つ目は「ペイドメディア」です。こちらは「求人広告/求人メディア/求人情報誌」を指します。採用媒体では、顕在層を多く抱え、採用につながる方々へリーチすることが可能となります。
オウンドメディア
2つ目は「オウンドメディア」です。オウンドメディアは自社採用ページや自社メディアなどが当てはまります。例えば採用ページでの情報量を増やしたり、ブログなどを更新して、自社ターゲットへ必要な情報を提供することができます。
加えて、既にエントリーいただいてる方へは、自社の理解度を高めてもらうためのツールとしても利用ができるため、社員インタビューやイベント等のレポートなど、社内の見える化をし、離脱防止などへ注力されている会社も増えてきています。
アーンドメディア
3つ目は「アーンドメディア」です。こちらは俗にいう「SNS」が主になります。各個人やユーザー同士で繋がりを持てるため、会社だけではなく「個人」へ興味づけすることができます。また、双方でコミュニケーションが取れるため、拡散力もあり候補者数を増やす手段として、採用担当者がこぞって取り入れております。
SNS採用に関しては、別記事でご紹介しておりますので気になる方はご覧ください!
実際に採用マーケティングを活用した実例
実際に採用マーケティングを活用した実例をご紹介していきたいと思います。
最近多いケースは、SNSを利用した自社ブランディングです。興味を持った候補者からTwitterを通じて、実際にカジュアル面談を実施し、最終的に入社に至ったという声が挙げられています。
社名を検索し、発信者からの情報をすべて見た際に、興味を持っていただいたそうです。
この採用の成功要因としては、
- 各個人より発信を行った
- 発信内容を統一した
この2点が、決め手となったようです。
各個人で発信することにより、顔が見えるという信頼性と発信内容を統一することで、ご本人が描くキャリアや会社の想い、会社自体の一体感が垣間見えたところが、エントリーへ繫がったようです。
まとめ
採用において大事な採用マーケティングをご紹介させていただきました。
今後の採用市場は、短期的なスポット採用と長期的な採用活動と2極化する可能性があります。新卒採用においては、通年採用や長期インターンなど大学1年生からキャリアや就活へ触れる機会が増えてきております。そのためスポットで採用活動をしようと思ったときには、既に業界や会社を絞ってしまう可能性があるため、接触が測れない可能性があります。
また中途採用においては、スキルを持っている人材はリファラル採用やヘッドハンティングのような形で、市場に出ることなく転職する可能性が高まっています。
まずは知っていただくための広報活動が重要になってくると思います。