【事例紹介 Vol.6】『100名の壁』急成長ベンチャー企業が語る課題と施策とは?

今回は、セールスベンチャーとして「通信・人材・パラリーガル・インフラ・IT・モバイル」などといった幅広い業種の営業・コンサルを手掛ける会社、株式会社日本通信サービスの取締役 新村さんに、成長中のベンチャーならではの組織拡大における壁やその打開策についてお伺いしてきました。

株式会社日本通信サービスとは?

通信領域、人材領域、法務パラリーガル領域、インフラ領域、IT領域、モバイル領域など、2011年の事業発足から約10年、質の高い営業力で多方面から信頼を積み重ね、まさに急成長中のベンチャー企業。2021年8月現在、社員数290名。

【HP】https://www.ncs-co.jp/

【Instagram】https://www.instagram.com/ncs.official/

インタビュー協力者

新村 元(Gen Niimura)
神奈川県出身。高校卒業後、東京六大学野球への憧れを持ち、一般入試で立教大学へ入学。体育会硬式野球部に所属。卒業後、大手総合広告代理店へ入社。アカウントエグゼクティブとして大手クライアントのプロモーションやCM制作に携わる。現在は、株式会社日本通信サービス取締役、株式会社リクルートネット代表取締役を務める。

組織拡大における壁って?

成長中のベンチャー企業で必要なこととして、人員増加・組織拡大がよく挙げられますが、拡大する中で起きた問題や壁はありましたか?

陥った『100名の壁』と見えた組織

人数における拡大で、弊社がはじめにぶつかったのは『100名の壁』でした。100名を超えてはまた90名80名に減り、また増えては減りという事態が2年ほど続きましたね。

同志が集まった「集団」から「組織」へ変化することが求められていたのだと思います。

100名までは理念やビジョン共感で牽引できていた印象ですが、それ以上となると、経営層による直接のマネジメントに限界が出てきてしまい、今まで培ってきた企業文化や理念、ビジョン浸透の難易度が急激に上がります。

もちろんこれに対し、世界には何千人・何万人という社員が在籍するリーディングカンパニーがたくさん存在する訳ですから、それらの事例を徹底的に分析しましたし、経営層で深夜毎晩話し合うこともしてきました。

あらゆる手を使ってきたので、どれが一番の策かはわかりませんが、最終的に弊社のカルチャーとフィットしたなと感じる打開策は、これまでの理念・ビジョン共感に加え、より深部にある個人の働く目的に目を向けたことだったと思います。

個人の目的というのは、要するに「社員がどこを目指しているのか」「何のために頑張るのか」です。それを一緒に考え理解することに力を注ぎました。100名までは、会社に社員が共感することでやって来られましたが、100名以上の規模では、逆に社員に会社が共感し、社員が目指す自己実現を会社が後押ししなければいけないと思いました。

そこからは、例えば採用選考の段階から、面接ではなく面談という位置づけに変え、個人の目的に着眼点を置いた質問を増やして寄り添ってみたり、入社後の初期研修でも、一般的なビジネスマナーから始まるTHE新人研修的なカリキュラムから脱却し、採用選考よりもさらに深く個人の目的を考え導きだすためのワークや面談に時間を割くようにしました。

もちろん研修後、現場に配属してからも定期的にその目的を見直していく機会を仕組化していきました。そうすることで、会社の目的と個人の目的がリンクするようになりましたね。

人数が増えると、多少なりとも会社の理念やビジョンへの共感を継続させることは難しくなります。そんな中で、個人の目的に着目し、その目的が会社を成長させることで実現できる。

そうした状態を築き上げてきたことが、100名の壁を打破できた1番の要因だったのではないかと思っています。

また、現在は300名の壁にぶつかりつつあります。まさに今着手していることとしては、理念やビジョンへの共感と個人の目的に加え、果たしてそれらを叶えるための「手段」が社内にどれだけあり、どれだけ質が高く効率的かということを追求しブラッシュアップすることです。

社員が増えるごとに社員の目的は多様化します。その多様性を受け入れられるだけの環境を社内にどれだけ作れるか。これが次の課題だと思っています。

それは社内制度の改善や新規立案、評価の明確化、ジョブチェンジの選択肢の多さ、その他あらゆる仕組などたくさんあります。

300名の壁を突破するためには、それらを経営層だけではなく、中間層・リーダー層を巻き込んで実施していく必要があると考えています。最近では、1on1ミーティングが仕組化してきました。

ジョブチャレという企画立案型の制度が設けられ、会社に導入したいシステムや仕掛けたい施策などを、年次を問わず誰もが発信できる機会が生まれました。

まだまだ300名の壁を完全に乗り越えるまで精進する必要がありそうですが、経営層だけではなく、若手が発信し、組織を変えることができる環境を提供することは、遠回りのようで、実は近道なのではないかと思っています。

○○名の壁とは

補足情報として、組織には大きく分けると「30人・50人・100人の壁」というものがあります。

ほとんどのスタートアップ企業は、社長1人か気心知れた仲間数人でスタートしますが、事業が軌道に乗ると徐々に社員が増えていきます。

30名の壁

数名の組織だと社長がトップに立ち、社員が比較的対等であるケースが多く経営方針や事業方針などが伝わりやすいため、コントロールしやすいです。しかし30名ほどになると組織化が必要になってきます。

属人的な経営や業務から、社員へ裁量を持たせる動きが必要となります。

50名の壁

また50名を超える頃には、中間管理職の強化が必要となります。

会社によってはトップダウンの方針から、ボトムアップへ移行するケースもあるでしょう。

どちらにせよ中間管理職を強化し、情報を双方へ伝達させる動きが必要となります。

100名の壁

100名の壁では、分業化が必要となってきます。効率化し最適な配置が求められるでしょう。そのため、採用ポジションや人材要件が異なるため組織の多様化が進むため、文化浸透し共通認識を進めなければ舵取りが難しくなります。

ある程度、現場責任者へ裁量を移行し各組織のカラーを作りつつ、秩序を保ちながら進める必要があります。

組織が変わると採用も変わる?

実際のところ採用も変わりました。新卒採用に始めたのが17年度卒で、その当初は今でいう人事本部という採用を行うための部署が存在していませんでしたから、仕組もありませんし、母集団形成ができていなかったということもあり、ポテンシャルだけで戦っていましたね。

現在のように採用市況を捉えて戦略的にフローや施策、体制を構築することなど考える余裕もなかったですね。

現在では、3000名ほどの応募が年間で集まるようになりました。弊社には、「何をするかより誰とするか」という創業当初からのスピリッツがあります。

多角的なビジネスを展開し、進化し、生まれ変わることも多い会社だからこそ、働く仲間にフォーカスし、どんなビジネスであっても、仲間と困難を乗り越えたときに得られる特別な感情を大切にできる風土を重宝しています。

社内でも制度化している1on1を選考フローでも活用し、学生の働く目的にとことん向き合う、そして伝えるべき会社の現状については、等身大を意識し、良く見せることだけに特化せず、リアルな苦悩、厳しさもしっかり発信することを大切にしています。

組織拡大と採用強化は別々の点ではなく、間違いなく密接にかかわりのある線だと思います。ですから、社内で今大切にしていることを採用選考の活動そのものに反映することはとても大切だと考えています。

そのためには、ベンチャー企業であればなお一層、成長途中で変化が激しいからこそ、経営・人事・現場に隔たりを作らず、より新鮮な状況を常にキャッチボールしながら進めていく必要があります。

まとめ

組織拡大における課題はつねに生じるため、頭を抱える経営者の方も多いでしょう。

お伺いした中でも、組織の拡大において働き手の求めることが変化していくことに、会社として柔軟に対応していくことで、成長や拡大へ繋げることができると思いました。

また人事領域で担当をされる方であれば、経営視点を持ち中長期計画に沿った人材設計と組織体制の変革を行う必要があるのではないでしょうか。

ぜひ参考にしてみてください。

稲葉 愛採用コンサルタント

株式会社HR teamの内定者として長期インターンを1年半実施し、同社に入社。インターン生時代から採用コンサルタント業務の部署立ち上げを行い、年間100社以上の採用のコンサルティングを実施。現在は、株式会社HR team全体の法人営業部門の立ち上げを行い、新卒採用だけでなく、インターン、中途採用など多岐にわたる採用に関するコンサルティング業務を行う。

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