はじめに
ベンチャー企業の方にとって、ノウハウが少なく、悩みがちなポイントの1つが採用です。
最初から各ポジションで有能な人材がそろっているならともかく、即戦力かつ良い人間関係が築ける人間を、新規で確保するのはなかなか難しいでしょう。
新規学卒にせよ中途採用にせよ、事前にしっかり戦略を決めておく必要があります。
こちらの記事では、ベンチャー企業で考えたい採用戦略についてまとめました。
経営者の方・採用担当者の方はぜひ参考になさってください。
ベンチャー企業こそ採用戦略を練る必要がある
ベンチャー企業こそ、採用に力を入れるべきであるという理由がいくつかあります。
1つは「育てる」余裕がベンチャー企業では少ないという理由です。
歴史ある企業では、新しく入ってくる社員をどのように育てていくか、ノウハウが蓄積されています。
そのため、ある程度「使える」人材を確保すれば、自然とその新人が育っていく可能性も高いです。
しかしベンチャーの場合、新しく入ってきた人を、どのように育てるかの体制もまだ整っていません。
そのため、採用の時点で、その方の数年後のビジョンまでしっかり描いておく必要があります。
ベンチャーでは知名度などの理由で応募者の絶対数が少ないというのも、採用戦略を練るべき大きな理由です。
応募の絶対数が少ないということは、それだけで採用活動における大きなデメリットです。
たった1人見込みのある人材を逃しただけでも、大きな損失となってしまいます。
このデメリットのカバーができる戦略を用意し、優秀な人材を確保していかなければなりません。
ベンチャー企業が選ぶべき採用方法には何がある?
最初に、ベンチャー企業の採用方法について考えましょう。
長く採用活動を続けてきた企業では、求人サイトやハローワークなどで採用のプロセスがある程度固まっているものです。
しかしベンチャー企業では、どの媒体で応募者を募るかから、しっかり吟味する必要があります。
以下の見出しで、代表的な方法についていくつかまとめました。
もちろん、複数の方法を同時に試すこともできます。
自社の業務内容などを考え、最適な方法を見つけてください。
ベンチャー企業向けの求人サイト
もっとも代表的で手堅い方法は、求人サイトの利用です。
求人サイトはかなり多くのサービスが展開されており、自社に最適なサービスを探すのに時間がかかるでしょう。
ベンチャー企業向けに設計されているサイトだけでも、複数のサイトが運営されています。
サービスを選ぶ際のポイントとしては、「どんな業種・年代の応募者が多く集まっているサイトか」「サポートがしっかりしているか」「定着率などの実績がどれだけあるか」といったことがあります。
求人サイトは仕事を探す方の評価と、採用したい側の評価が比例しやすいので、求職者の口コミも参考になることがあるでしょう。
良いマッチングのために労力をかけてくれる、面倒見の良いサービスを探すことが大切です。
採用イベント
次に、採用イベントで見込みのある求職者を探すという方法もあります。
採用イベントの大きな利点が、直接興味のある方に企業側からアピールができる・その場で質問を受け付けられるという点です。
イベントで顔を合わせているので、そのあとの選考過程がスムーズに進みやすいという利点もあります。
手間や費用がかかるとはいえ、イベントで良い求職者が見つかる可能性は少なくありません。
ただし、求人サイト主催で採用イベントが開催されていることも多く、イベントからの採用を考えるのなら、求人サイトでの活動と並行して行うのが基本です。
サイトで求人を出すだけではなかなか人が集まらない・できるだけ多くの方に声をかけて、一刻も早く採用活動を進めたいというときはイベントも活用しましょう。
ソーシャルリクルーティング
最近は、SNSを活用したソーシャルリクルーティングという形で、新規採用を進める企業もあります。
ただし、SNSと親和性の高い業種の方を採用するのでなければ、この形で満足のいく採用ができる可能性は高くありません。
デザイナーなどクリエイティブ職の方は、SNSから仕事を受けている方も多く、フリーランスの中には安定した収入を得るため、企業に所属したいと思っている方もいます。
そうした方を採用したい場合、SNSでスキルの高い方をスカウトするのも手でしょう。
しかしいきなりSNSで「うちに就職しませんか」と声をかけても、うまくいく可能性が低いのはいうまでもありません。
ある程度SNS上での活動実績・信頼度が求められるので、ゼロからすぐに採用までこぎつけることはできず、時間がかかる場合もあります。
エージェント
求人サイト上でも多くの就職・転職エージェントが活動しています。
採用担当者や経営者の方で、知り合いのエージェントがいるならそちらの伝手を頼るのも手です。
自社について理解のあるエージェントの方なら、適性の高い方を紹介してくれる可能性も高まります。
特に中途採用の即戦力を採用したい場合、エージェントのもっている情報網が頼りになることも多いです。
ただし長年付き合いのあるエージェントの方に依頼する場合でも、どんな人が欲しいか・どんな条件で採用したいかなどは、しっかり打ち合わせなければなりません。
エージェント採用はマッチングがすべてといっても過言ではありません。
ミスマッチのないよう、エージェントに伝えられる情報はすべて伝えておきましょう。
リファラル採用
リファラル採用とは、役員や社員の知人・友人・親族などから新しい人を紹介してもらい、採用する方法です。
実はベンチャー企業の場合、このリファラル採用も有力な選択肢の1つとなります。
リファラル採用の大きなメリットは、紹介してもらった手前、その方はすぐ退職しにくく、定着率が高いところです。
社員から会社について事前に話を通してもらっているため、話がまとまりやすいというメリットもあります。
一方、「お世話になっている方だから」といった理由で能力・スキルといった点でミスマッチのある方が紹介されることも考えられます。
この方法で採用を考える場合、本当に戦力となってくれるかを、しっかり見極めることが大切です。
面接もうやむやに済ませず、スキルなどをしっかり確認してください。
インターン
新卒を採用したい場合に有力なのが、インターンを通して採用活動を進めるやり方です。
インターンで良い学生と巡り合えた場合、その場でスカウトして、卒業後に入社してもらう約束を取りつけます。
実際に職場を体験できるので、学生にとっても安心感があるでしょう。
ただしインターンは卒業までどうしても時間が空いてしまいます。
その学生がインターン終了後に、さらに魅力的な職場を見つけてしまう可能性もあるのです。
新卒を何人か募集するうちの、何割かをインターンで採用するのは良い手となりますが、100%採用活動をインターンに限ってしまうと当てが外れることになりかねません。
何人採用するかの計画を事前にしっかり立てておき、過不足ない採用を目指しましょう。
独自の方法
ベンチャー企業の中には、応募者の少なさというデメリットをカバーするため、独自の方法で採用活動を進める企業もあります。
たとえばチームラボでは「卒制/卒論採用」でのエントリーを受け付けていることが有名です。
学部卒・院卒・第二新卒などを幅広くカバーできる、ポートフォリオなどでスキルを確認できるといったメリットがあります。
面白法人カヤックでは、さらにユニークな採用活動を発表しました。
「一芸」ならぬ「いちゲー採用」です。
ゲーム開発ならではの採用方法で、ゲームにかけてきた情熱や、スキルを評価するという方法で応募者を集めてきました。
応募者の少なさに課題を抱えている企業で、こうしたユニークなやり方がどんどん増える可能性も考えられます。
ベンチャー企業が採用戦略を練る際に注意すべきことは?
次に、ベンチャー企業が採用戦略を練る際の注意点をまとめました。
次々とやらなければいけないタスクが迫ってくる、少人数運営の企業では、つい「選考をいち早く済ませ、新しい人を」と考えたくなってしまいます。
しかし戦力にならない方・自社と相性の良くない方を採用しても、課題の改善にはつながりません。
逆にしっかり採用戦略を練る段階に力を入れることが、選考をスムーズに進めスピーディーな戦力補強につながります。
急がば回れの気持ちで、最初の戦略立案を大切にしましょう。
ブランディングを念入りに行う
まずは企業のブランディングをしっかりすることです。
応募者を増やす点でも意味がありますし、せっかく来てくれた応募者に辞退されにくくするうえでも、大切なポイントとなるでしょう。
まだ売り上げなどの数字でブランディングできない場合でも、経営者の方が過去にもビジネスを成功させている・ほかの会社でも成功しているなら、そちらを助けにすることもできます。
すでに働いている方の仕事内容・実績などをわかりやすく紹介することも、「この会社で働きたい」という気持ちをもってもらうのに役立つでしょう。
ソーシャルリクルーティングを考えている場合、SNSでの活動実績作りも大切です。
商品やサービスのPRをしつつ、求人応募を受け付けていることも定期的に投稿することで、そのあとのスカウトにつながることがあります。
採用ターゲットを明らかにする
続いて、採用ターゲットを明らかにすることも考えていきましょう。
これは「〇〇のスキルをもっている方」「新卒」「既卒」といったことだけでなく、企業の社風に合った方にたくさん応募してもらううえでも重要です。
特にベンチャー企業の場合、自分でさまざまな業務にチャレンジしていける、アントレプレナーシップ・チャレンジ精神をもった方が欲しいという場合も多いでしょう。
立ち上げて間もない企業・これから立ち上げる企業の場合、最初はどうしても残業や、休日出勤で対応しなければならないこともあります。
ワークライフバランスを大切にしたい求職者・条件面で譲れないポイントがある求職者にとって、多忙を極めるスタートアップ時の採用は大きなミスマッチとなる可能性があるでしょう。
選考は素早く進めていく
一度採用戦略をしっかり決めたあとは、選考をできるだけ素早く進めるようにすることも大切です。
ベンチャー企業で優秀な人材を確保しようと思うのなら、有名企業・大企業とも勝負していかなければなりません。
選考プロセスが遅いと、選考途中で欲しいと思った人材が他企業に採用されてしまう可能性も考えられます。
大手の新卒では、面接を何度も繰り返して最終的に内定を出すのが普通です。
しかし、ベンチャー企業では面接を1〜2回、時間をかけて行う方が、人材確保のうえで有利になるでしょう。
採用責任者・役員としっかりスケジュールを合わせておき、一度の面接で関係者全員の合意を得られるのが理想的です。
面接の際に好感触の方は、「採用ならいつから来てもらえるか」というスケジュールも面接の中で確認しておくようにしましょう。
企業側からアプローチしていく
ベンチャー企業の弱点である知名度の低さ・応募者の少なさをカバーするため、企業側が受け身にならず、積極的に情報発信していく姿勢も必要です。
イベントへの参加・SNSの活用など、自社の業務内容に合った形で露出を増やしていきましょう。
特にピンポイントで1人ないし2人の経験者を採用するのではなく、業務拡大などで多くの人出を必要とするときには、事前の情報発信が欠かせません。
応募者にとっては、その企業の「名前を知っている」「聞いたことがある」というだけでも安心感に差が出ます。
企業の名前、もしくはメインの商品やサービスの名前を浸透させることで、より良い人材が集まってくることも多いです。
メディアから取材を受けたタイミングなどを、新規採用の大きなチャンスと考えることもできます。
まとめ
ノウハウが少ないベンチャー企業にとって、思ったように社員を集めるのは、決して容易ではありません。
そのため、事前の戦略立案とブランディングなどの準備が非常に大切です。
SNS・エージェントなど、採用の「方法」を吟味することも重要になってきます。
特に企業を立ち上げたばかりの時期・拡大させる時期は、中核社員の質がビジネスの成否を大きく左右するでしょう。
満足いく採用活動を実現し、少しでも自社の成長につなげられるようにしてください。