新卒社員の離職を防止するための15の方法!入社前・入社後に分けて詳しく解説

新卒社員の離職率は約3割

新卒社員の教育や育成と同様に、人事の大きな課題は新入社員の離職の防止です。

日本では約30年もの年月のあいだ、「大卒の新卒社員の3人に1人が離職する」というきびしい状況が続いています。

若手社員が育たないのは、企業の将来を考えると、何よりの大きな痛手です。

はたして、長年の間若者の早期離職に歯止めをかけられない理由はなんでしょうか。

入社前後の対策とあわせていくつかご紹介します。

若手の離職に悩んでいる方はぜひご参考ください。

新卒社員の主な離職理由は?

新入社員が退社を決意する決め手となる理由は多種多様にあります。

その中でも、一番多いものは「希望する業務と実際に与えられた業務のミスマッチ」です。

そして続いて「給与や福利厚生に不満がある」、「今後のキャリアアップが望めない」「長時間労働がきつい」という理由が多いです。

このことから、業務面や給与面での不安や、不満を抱えての離職が多いことが見て取れます。

また、「職場の上司や同僚との人間関係のストレス」や「企業の社風が自分の性格に合わない」など、職場の環境に居心地の悪さを感じたことが、離職の理由となるケースも多く見受けられます。

このことから、若手社員の多くが自分の希望する職種や環境で新しくキャリアを形成したいという気持ちで、早期離職することがわかるでしょう。

企業が離職防止策を講じる必要があるのはなぜ?

離職防止策とは、企業が社員の離脱を防ぐために講じる対策を指します。

リテンションマネジメント、リテンション施策と呼ばれることもあり、近年注目されているのです。

しかし残念ながら、日本の企業は、離職防止のための体制が十分に整えられていないと世界から評価を受けています。

人手不足に悩む企業が多い中、離職防止が大きな課題であることは当然です。

また、そのほかに離職防止策が重要視される理由はほかにもあります。

3つに分けてご紹介しましょう。

企業イメージの悪化を防ぐため

まず、離職率が高いということは、企業にとって大きなマイナスイメージとなります。

就職活動をする学生の中では「離職率が高い=ブラック企業」という考えが定着しつつあるのです。

入社後も社員が定着せず、すぐに辞めてしまうということは、「ソルジャー採用で使い捨てとして扱われるのではないか」、「パワハラや無理なノルマがあるのではないか」という懸念を呼びます。

そのイメージから応募数が減ってしまい、必要な人材の確保が困難になるおそれがあります。

優秀な人材の流出を防ぐため

離職防止策が不十分だと、優秀な人材も不満を抱き、他社へ流れてしまうリスクがあります。

「優秀な成績をあげても正当に評価されない」「今後のキャリア形成が見込めないなど」社員の抱える不満に向き合って解消しなければ、「若いうちに別の環境で再スタートを切りたい」と考えられても無理はありません。

むしろ優秀な社員だからこそ、新卒の会社に固執しなくとも引く手あまたです。

そのため、より良い環境の会社が見つかれば、あっさりと早期に退職してしまうのです。

採用コストの無駄をなくすため

離職防止策を強化すると、結果として採用コストの削減にもつながります。

新卒社員を採用し、教育するためには莫大な費用と時間がかかります。

手間暇かけて育てた社員が一人前になる前の離職は、企業にリターンが少なく採用コストは無駄となってしまうでしょう。

それだけでなく、離職した枠を埋めるために人材を採用、教育するコストが新たに発生します。

新入社員の早期離職はコスト面でもデメリットしかありません。

離職防止策は経営の観点から見ても、非常に重要なのです。

新卒社員の離職防止に効果的な6つの方法【入社前】

若手社員の離職の防止は、企業の将来をさまざまな観点から見ると非常に重要です。

加えて、迅速に対応する必要があるとわかりました。

そして、入社を控えた2割もの内定者がすでに離職を検討しているという、衝撃的なデータがあります。

複数の内定を得た内定者が、入社前に企業のマイナスな情報を得ることで、内定辞退、もしくは早期離職を前提に入社するのです。

それでは、優秀な学生を入社させ、定着させるために入社前からできる施策はあるのでしょうか。

就職活動中にできる6つの離職防止の方法をピックアップしたので、ぜひご覧ください。

①正しい情報を発信する

まず、採用や選考の時点で質問を受けたら、ありのままの情報を学生に伝えましょう。

これはRJP対策と呼ばれています。

時間外労働もある、繁忙期は有給休暇の取得が難しいなどの学生にとって、マイナスイメージになる情報も、隠さず話してください。

そうすることで、もっとも多く見受けられる、入社後に感じるイメージとのギャップや、企業が合わないといった理由による離職の防止につながります。

また、「悪い情報も包み隠さず伝えてくれる、信頼に値する企業」と判断される可能性もあります。

②説明会や面接ではオープンに接することを心掛ける

説明会や面接では、堅苦しい雰囲気ではなく、オープンに接するよう心掛けると効果的です。

面接で学生が緊張のあまり取り繕ってしまうと、本音を見極めるのが難しくなり、入社後のミスマッチを起こすリスクがあります。

学生のありのままの姿を引き出せるような雰囲気作りで、選考を進めることが重要になります。

そうすれば、質疑応答を繰り返す中で、企業の価値観を学生に伝え、それに合う志望動機やビジョンをもっているかを正確に見極められるようになるのです。

③懇親会・座談会を設定する

内定者同士の懇親会や、先輩社員との座談会などのイベントを充実させるのも、離職防止に有効な手段です。

学生同士がフランクな雰囲気で会話する空気を作ることで、企業は学生の本音を耳にできるだけでなく、直接コミュニケーションを取り、モチベーションを高められます。

また、入社前に抱える不安も、立場が近い若手社員と話すことで解消します。

内定者同士の横のつながりができることで、「一緒に頑張ろう」という意識が芽生え、内定辞退や早期離職の歯止めとなる効果も期待できるでしょう。

④社内行事に参加してもらう

社内の雰囲気を実際に内定者に知ってもらうため、社内イベントに招待するのも早期離職のストッパーとなります。

運動会や忘年会や新年会など、業務以外の行事に内定者を招き、現職の社員とフランクにコミュニケーションを取ることで、内定後に抱いた不安や疑問を解消できます。

また、「この会社の社員になる」という帰属意識を向上させ、内定辞退や離職の意思を削ぐ効果も期待できるでしょう。

しかし、内定者とはいえ社外秘の情報を漏えいさせないようにする、リアルな情報を与えすぎて、逆に不安を与えないようにするなどの配慮は必要です。

⑤内定者研修を実施する

内定者に向けて研修を開催するのも、離職防止や内定辞退に高い効果があります。

学生が抱いている入社後の漠然とした不安を取り除くだけでなく、入社前にブラッシュアップすることで内定者と現場の社員、双方の配属後の負担やストレスを減らすねらいがあります。

内定者研修を経た学生は、基本的なビジネスマナーを学び、社会人としての意識が芽生えるだけではありません。

内定者同士でもコミュニケーションをはかることでチームワークも学び、「この会社で頑張ろう」と前向きに意識を転換する傾向があります。

新卒社員の離職防止に効果的な9つの方法【入社後】

内定後の段階でさまざまなイベントや研修を開催することで、内定者の不安を払しょくし、入社後のイメージを具体的に抱かせることで、企業とのミスマッチによる離職を防止する方法について説明しました。

しかし、入社後になんのフォローもなければ、若手社員は新たな不安や不満を抱え、うまく解決できないと転職活動を始めてしまうでしょう。

近年の学生は素直で真面目な面がある反面、失敗をおそれてチャレンジを嫌い、打たれ弱い傾向にあります。

入社後もさまざまな形でサポートし、企業への帰属意識を高める必要があります。

①メンター制度を導入する

メンター制度とは、経験値の高い先輩社員であるメンターが、メンティーと呼ばれる後輩の相談に乗り、キャリア形成をサポートする制度です。

業務を教えるOJTの社員とは別の立ち位置で、仕事に対する意識をライフスタイルの観点から共に考えるという立場になります。

たとえば、結婚、出産後のキャリアビジョンが見えないと悩む女性社員には、ワーキングマザーとして活躍するメンターがそばにいれば、悩みや不安を共有・共感でき、精神的な支えとなるでしょう。

メンター制度を導入すれば、さまざまな価値観の若手社員に対する細かいケアが可能となります。

②新卒社員全員が参加する新人研修を設定する

入社後いきなり現場に任せるのではなく、新入社員全員が参加する研修をワンクッションとして挟みましょう。

研修を通じて理想と現実のアンマッチを軽減する効果が期待できるのです。

新入社員研修では文書作成やビジネスマナーなどの社会人としての基礎や、業務に必要な専門知識、企業の経営理念や企業風土を学びます。

そうすることで配属後スムーズに現場の空気になじめ、企業の風土や慣習と合わない、居心地が悪いという理由での離職の防止につながります。

③定期的にアンケートや面談を行う

数ヶ月おきなどの定期的な間隔で、アンケートや面談の機会を設け、新入社員の悩みや不安を共有することで社員のモチベーションを管理しましょう。

離職に至るまでに社員は数ヶ月、数年単位で悩みます。

その結果、「解決のきざしが見えない」「今後企業で働くビジョンが見えない」と判断すれば離職に踏み切ってしまうのです。

社員の中で不安がふくらむ前に、具体的な離職につながる原因を可視化することで、離職防止に関する具体的な策を早期に設けることができ、人材が定着する土台を作れます。

④社内コミュニケーションの機会を増やす

面接や研修などかしこまった機会でなくとも、社内でコミュニケーションがたくさん取れる環境を作るのもおすすめです。

普段接点のない上司から急に呼び出され「悩みを話してくれ」と言われても、部下はかしこまって、本音をすぐには話せないでしょう。

人間関係において、悩みや不安を共有するようになるのは、信頼関係を構築する次のステップです。

上司が部下に積極的に話しかける、ランチを共にするなどの機会を増やし、日常的にフランクな会話ができる雰囲気作りを意識しましょう。

⑤労働時間の適正管理をする

休日出勤や時間外労働が多い職場では、当然社員はストレスフルになり、離職へと心が動いてしまいます。

日本の労働時間の長さやサービス残業などの悪しき習慣は問題視されており、ストレスにより心身のバランスを崩し、休職や離職に至る社員が多く見受けられます。

職場の環境を改善するという意味でも、労働時間を適正に管理しましょう。

そのために、社員に労働時間を自己申告させるのではなく、ICカードや勤怠管理システムを導入するなどして、適切に管理することをすすめます。

⑥休暇取得をうながす

有給休暇や特別休暇の取得を若手社員に励行し、ストレスの軽減をはかりましょう。

「先輩が働いているのに休みづらい」と、本来権利である有給休暇の取得に踏み切れず、不満やストレスを抱える新入社員の姿はよく見受けられます。

しかし、2019年4月から労働基準法の改正により、有給を確実に取得させることが企業へ義務づけられました。

休暇を取りましょうとすすめる、というよりは社員に強く推奨するというスタイルで、年内の有給消化を目指してください。

⑦人事評価制度を見直す

評価制度への不満から転職へ意識を向ける若手社員は、年々増加しています。

自分の労働や成果に値する評価を得られず、満足のいく報酬が得られなければ、当然モチベーションは低下します。

たとえば、フィードバックを迅速に行いリアルタイムで評価する、1人の上司でなく複数人から評価する全方位型を導入する、フィードバックや評価の背景をオープンにすることで、社員の納得いく人事評価制度を導入しましょう。

正当に評価されているという意識は、会社へのエンゲージメント率上昇にもつながり、離職防止に高い効果を発揮します。

⑧ワークスタイル変革を行う

2019年の「働き方改革」の導入により、個人に合わせた労働環境の改変が求められるようになりました。

ワークスタイルの変革とは、1つの働き方に皆が収まるのではなく、従業員一人ひとりが、それぞれベストのパフォーマンスが発揮できるような労働環境を整えることです。

雇用形態を見直すことで、社員がワークライフバランスを確立でき、良いコンディションで業務に臨めるために、結果として離職防止だけでなく作業効率の向上につながるというデータもあります。

そのためにさまざまなツールを導入し、不必要なメールや会議を削減するなどの作業効率化が求められます。

⑨キャリアデザインを支援する

先述したように、実際の業務と自分のキャリアビジョンの乖離が、もっとも多い早期離職の理由となっています。

そのミスマッチを防ぐために、求める知識やスキルを業務で与えられるよう支援することも、離職防止策となります。

そのためには、社員が働くうえで大切にしているものは何か、どのように成長していきたいかなど、ヒアリングする機会を設ける必要があるでしょう。

必要に応じて社外研修に参加する機会を設ける、他部署に研修に参加させるなどして、社員が働くモチベーションを保てるように心掛けましょう。

まとめ

新卒社員の離職防止のための施策について、時期別にまとめました。

新型コロナウイルスのまん延でテレワークの導入が進み、社内で必要以上にコミュニケーションを取ることが困難になりました。

そのため若手社員と意思疎通ができず、職場への不安や不満の解消が滞り、早期離職の流れが加速するのではないかという懸念も生まれています。

入社前から企業と触れ合い、入社後も社員同士で話し合い、上司ともキャリアビジョンについて共有する機会を設けることで、離職防止につながるだけでなく社内の風通しも良くなります。

取り入れられるものから取り入れ、若手社員が育つ企業の環境作りに役立ててください。

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