集客だけではなく、ミスマッチを軽減する採用広報とは?

近年リクルーティングページに拘り情報量を増やしたり、動画を利用し情報を発信するなど採用における広報活動は多様化してまいりました。

しかし情報は求職者側に受け取ってもらい、認識の差異が起こらないことが前提です。また時代や世代によって情報を収集するツールが変わります。今回は、採用活動を行う上で注目されている「採用広報」について紐解いて説明していきたいと思います。

採用広報とは?

「採用広報」とは、企業が求める人材に自社を就職先・転職先として検討してもらうために知っていただく活動です。また会社で働くイメージを持っていただき、ミスマッチが起こらないようにするための施策でもあります。

採用広報は企業広報と若干異なります。自社の紹介や製品・サービス紹介などだけではなく、求職者やターゲット層に必要な情報を開示する必要があります。

そのため、基本的な募集要項や求人内容だけではなく、会社の理念やMVV(※1)、働く人や職場の雰囲気を知っていただき、興味付けから入社後の活躍までを支援するコンテンツを発信していくことです。

※1
MVVとは、ミッション、ビジョン、バリュー(Mission, Vision, Value)の略語です。

なぜ採用広報が注目されているのか

採用活動から定着・活躍までを進めていく上で「情報」という観点で重要となります。

2020年に厚生労働省より発表された大卒新卒者の3年以内の離職率は32.8%と、ここ数年横ばいに近い形で、一定数の早期離職者がいます。また在籍している社員でも、在宅ワーク・リモートワークの推進にあたり、ハイパフォーマンスをする人材雇用ができているのか、不明瞭な点もあるのではないでしょうか。

リクルートワークス研究所の調査によると、2022年卒の大卒求人倍率は1.50倍と求職者が売り手市場あることは変わらずのため、人気業界や有名企業であれば採用活動において優位性が高いですが、やはり認知度や知名度がない企業ですと、集客から入社まで苦戦することも多いです。

また入社後3年以内に30%の離職を考えると採用が成功していても、定着・活躍まで見据えていかなければ、想定の人員計画や事業計画に支障が出てしまいます。

加えてオンライン化が進み、情報量と質がリアルな場面と異なるためです。特に非言語な領域は、伝わりづらく「働くイメージを持ちにくい」「実際の仕事が想像つかない」など、入社をきめてもらいにくくなります。

採用広報のメリット

採用広報を行うことで得られるメリットをご紹介していきたいと思います。

認知度の向上

1つ目は、認知度の向上です。そもそも求職者が求人を探すとなると、知っている企業や利用したことのあるサービスから検討することが、通常かと思います。要は考えたり、検討した際に「自社」が求職者の脳内で候補として上がってくる必要があります。

認知度・知名度がある状態ですと、「知っている」から「検討してくれる」という状況が見込めます。どのようなタッチポイントで認知度を向上させるかは、ツールによって異なるため後ほどご紹介いたします。

候補者の志望度向上・歩留まり向上

情報を露出しておくことによって、興味や会社への理解度を醸成することが可能となります。また選考を進めるにあたって調べてから臨むため、情報量や質が高いと候補者が会社へのイメージを持ちやすくなり、志望度を上げる施策になり得るでしょう。

また志望度が高まることで、選考途中での辞退を減らすことができるため歩留まり向上へもつながります。併せて自社の理解度が高いことによって、選考の質を上げることができるようになります。

ミスマッチの軽減・入社後の定着、活躍が見込める

例えば現場社員のインタビューやスケジュールなどをコンテンツとして掲載することによって、入社後どんな仕事をするのか、どのような働き方をするのかがわかるため、入社後のイメージをしやすくなります。またその仕事や業務が自分に合うのかどうかを理解することができるため、「イメージと違った」や「聞いてた仕事と違う」などといったミスマッチを防ぎやすいでしょう。

働き方の面もそうですし、文化や組織などどのようなタイプがいるのか、どのような雰囲気なのかを可視化することによって、ご自身の価値観やハイパフォーマンスを上げれる環境なのかを判断する一つの材料になるでしょう。

露出する情報とは?

採用広報を始めようと言っても、どんな情報を露出していけばよいのかわからない方向けに、説明していきたいと思います。

ただし大前提として、ターゲットが明確になっていることが重要です。

例えば、ビジネスリテラシーの高い優秀な方を採用していきたいと考えている中で、露出する情報が「社内イベント」や「社内の雰囲気」だと、刺さりにくくなるでしょう。

エンジニアを採用ターゲットとして全く違う職種のインタビューばかりとなると、エンジニアの候補者はあまり魅力的に感じにくくなります。

そのためターゲットを決めておくことは大事です。その中でも、王道は以下の5つです。

  1. 会社について:文化や価値観、MVVなど
  2. サービスや製品について:事業内容やビジネスモデル、今後の展望
  3. 仕事について:業務内容・仕事内容・職種など
  4. 社員について:どんなバックグラウンドを持った社員がいるのか
  5. 制度について:福利厚生や自社独自の制度など

発信方法

採用広報における発信するツールは様々あります。その中でも代表的なツールをご紹介していきたいと思います。

  1. 採用サイト
  2. オウンドメディア
  3. 動画
  4. SNS

1つずつ説明していきましょう。

採用サイト

まず候補者が目に留めるものは採用サイトです。中には、募集要項のみの簡易的な採用サイトも見受けられますが、実際に候補者の立場として説明会や面談などの情報だけですと、志望動機や動機形成をすることは容易ではありません。

そのため採用サイトを工夫し、代表メッセージ、社員同士の対談やスケジュール、採用職種など細かい情報を出しておくことで、「働く」や「仕事」へのイメージを持っていただけるでしょう。

オウンドメディア

オウンドメディアはウェブサイトやブログ・または電子メールのように、宣伝主体自体がコントロール可能なコミュニケーションチャンネルを指します。一番導入されている施策としては、自社の情報を発信するブログのような形で行っている企業が多いです。

例えば、社員インタビューなど人にフォーカスを当てたものから、取り組みや新しい施策・サービスのローンチをメインにするもの、業界用語などをまとめた知識系のメディアなど、候補者によって発信する内容は異なります。

一般的には、オウンドメディアは、育てるのに時間がかかりますが、自社のメディアとして永続して利用できるのが特徴です。

動画

近年採用動画を導入される企業が増えております。例えば、YouTubeのように1コンテンツとして発信している事もあれば、採用サイトなどに埋め込み密着動画や会社紹介などを行っているの主流です。

動画が選ばれる理由として、文字よりも1分間で得られる情報量が多いこと、視覚・聴覚から情報を得られることが大きいでしょう。「ラーニングピラミッド」 という、アメリカの国立訓練研究所が発表した研究結果によると、人間の脳は一方的に話をされるよりも動画を見て、目と耳の両方から情報を得た場合の方が、約2倍記憶に残るというデータがあります。

SNS

現在、集客以前の段階におけるタッチポイントとして注目されているのがSNSです。SNSの利用人口が年々高まっており、利用用途も汎用的になってきました。娯楽としての立ち位置から、検索エンジンや口コミなど複合的になってきております。

SNSごとにユーザーが変わるため、どれを利用されるかは以下の記事をご覧ください。

また実際に採用活動やファン作りをし、ブランディングに成功している事例は以下に載せておきます。

採用広報のデメリット

採用広報のデメリット、それは即効性がないことと成果が可視化できないことです。アンケートなどを取ればわかるかもしれませんが、採用数に直接的につながらないということもあり、後回しになる担当者の方もいらっしゃるでしょう。

その場合は、広報や社員と協力し実施することをおすすめいたします。例えば新卒向けに発信するのであれば、内定者や1年目メンバーを巻き込み採用広報の施策として、SNSやブログなどを更新しているケースもあります。

社内のリソースを借りながら実施することは可能かと思いますので、一度ご検討ください。

まとめ

採用広報は即効性がないものの、将来の採用活動を見据えて育てていくことが大事です。また会社の資産ともなり得る施策となるので、早く着手するに越したことはないでしょう。

またミスマッチを軽減する手法の1つでもあります。入社後の定着・活躍へ注力されているご担当者の方はぜひ実施してみてください。

稲葉 愛採用コンサルタント

株式会社HR teamの内定者として長期インターンを1年半実施し、同社に入社。インターン生時代から採用コンサルタント業務の部署立ち上げを行い、年間100社以上の採用のコンサルティングを実施。現在は、株式会社HR team全体の法人営業部門の立ち上げを行い、新卒採用だけでなく、インターン、中途採用など多岐にわたる採用に関するコンサルティング業務を行う。

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