今回は理念浸透を軸に、採用や組織活性化へ繋げている株式会社うるる 神崎さんにインタビューを実施してまいりました。
組織拡大において会社の方針やカルチャーの浸透は大事ですが、なかなか実施する施策が一辺倒になってしまいがちです。その中でどんな工夫をされて、どのように採用〜組織活性化まで落とし込まれているのか深く聞いてまいりましたので、ぜひご参考にご覧ください。
株式会社うるるとは?
日本の抱える社会問題の一つ「労働力不足」を解決すべく、独自のビジネスモデルを展開するITベンチャー企業。「IT×人力」の掛け合わせによるアプローチにより、自社ならではの付加価値を創出するSaaSを幅広く展開。中長期的な成長を見据えた積極投資・M&Aを行いながら、昨対比超えを続ける成長企業。
インタビュー協力者
神崎 智恵(かんざき ともえ)
四年制大学を卒業後、新卒でITベンチャー企業に営業職として入社。二度の転職を経て、2017年に株式会社うるるへ入社。入社以来、一貫して全社の採用を担い、現在は採用に加え成長支援・人事評価制度を担う、人事部 採用・組織開発課 課長として従事。自身のビジョンは、仕事を通じて「今が一番幸せ」と言える人が増える世の中創りに貢献すること。
うるるスピリットとは、どんな経緯で生まれたのか?
うるるスピリットとは?
2006年の創業当時に時代を遡るのですが、「役員五か条」というものがありまして、これが今の「うるるスピリット」の前身になります。
創業間もない本当に小さな会社だった頃、うるるでは社員があまり定着しない問題があったんですよね。
そんな状況に至っている理由を代表はじめ役員が考え始めた際、行き着いた結論は、「自分達に非があるのではないか」という答えでした。そこで生まれたものが「役員五か条」という役員のあり方を言語化したものです。
その概念をベースに、役員と社員の選抜チームで「うるるが大切にしていること」を言語化し、文章として整理したものが、今のうるるスピリット、そしてカルチャーになったという歴史があります。
浸透させるための施策とは?
組織マネジメントの一環として、代表の旗振りにより「シナプス組織論」という、うるるスピリット浸透のための取り組みが2019年より始動しています。
従業員数が増えるほどスピリットを浸透させ続けるのは難しいと思います。
実際、4年前に自分が入社した際は100名ほどの規模感でしたが、今では倍以上の規模に成長し、自分自身もスピリット浸透は従来通りの方法では難しくなってきている感覚を持っています。
これって、創業メンバーはもっと感じていることだと思います。部署が増えたり課が増えたり、組織が大きくなる中でも「うるるスピリット」が浸透する速さや、高純度の浸透を叶えたい。理念やビジョンを追求し前進し続けるために、「シナプス」を組織で体現していこうという代表の想いから始まった取り組みです。
シナプスとは?
人間の神経伝達構造である組織。シナプスがあるからそれぞれの神経に指示が行き届いて複雑な動きが可能になっている。
▼シナプス組織について
シナプス組織論の始まり
代表がシナプスを組織に置き換えて考えたことが始まりです。
組織では、経営陣(ボードメンバー)が部下に発信するトップダウンと社員が現場の第一線の意見をボトムアップする二方向の意見がありますよね。
一方的な意見だけではなく、その二つの意見を結合することが会社にとって必要なことなのではないかと考えられたことがきっかけで、うるるとしてもシナプスのように常に双方で意見が行き交う会社にしたいと、会社全体として「シナプス組織」の実現を目指すようになりました。
シナプス組織論の仕組み
弊社ではチームのリーダー(管理職、非管理職問わず)をコア、そのチームメンバーをコアラーと呼んでいます。コアは中心という意味から取っています。
100人以上の組織では、代表一人での浸透には限界があります。そこで、コアとコアラ―の小さな組織を点在させ、コアからの高純度な浸透を図ります。そのため、それぞれのコアがうるるのカルチャーを浸透させていくためのキーマンになります。
トップダウンとボトムアップ、双方向の情報伝達ができる組織を作ることがカルチャーを浸透させるために必要だと考えています。
コアの人が要(シナプス)ということでしょうか?
その通りです。
コアは、チームや組織の目標達成、組織課題の解決、また組織の成長に責任を負う役割を担う者のことです。うるるの理念・ビジョン・カルチャーを高純度に浸透させることに対して責任を負う者と定義づけています。
うるるのスピリットを言葉や態度で示すのがコアの大きな役割です。
従来の浸透方法とは?
年二回の社員総会など、事あるごとに代表から発信をしていました。企業理念や経営戦略などを言語化して、発信していた形です。自分自身も採用広報として言語化し、外部に発信していました。
しかし会社の規模が大きくなるにつれて、それだけでは社内に同じ純度で広がってはいかないのではないかと感じるようになりました。
もちろん言語化して伝えることも大切ですが、言葉だけではなく各部署で日常的に態度で示していくメンバーの数が必要だと感じるようになったとも言えるかと思います。
コアを育てる取り組み
サーベイを取り、理想の組織についてのアンケートを定期的に行っています。
例えば「コアは自分に本気でフィードバックしてくれていると思いますか?」「コアはスピリットを浸透させてくれていると思いますか?」などの質問をコアとコアラーの両方に投げています。
コアとコアラーのアンケート結果をまとめ、波形を見て双方で意思の疎通ができているか、認識が一致しているかを対話する時間がセットとなっている取り組みです。
双方の波形が大きくずれていたら、それって何でなんだろう?を対話し、課題設定と対策を全社のコアが行います。一方向の取り組みにしないためのものですね。
サーベイの質問基準はスピリットに沿ったものでしょうか?
スピリットの文言をそのまま引用することはないです。内容もスピリットに沿ったものではないものもありますがそれには理由があります。
「シナプス組織論」の中で人の関係性も大事にしているんです。
全社員がやりがいを持って最大限のパフォーマンスを発揮できるような会社という理想に近づけるため、人間関係が良好なことは重要だと考えています。
このアンケートはスピリットを浸透させていくための一つのツールでもありますが、会社の環境づくりにもいい影響を及ぼしています。
スピリットの文言を反映させた取り組みはありますか?
社内の人事評価制度はそのまま使っています。
人事評価制度は、2021年度よりリニューアルを行ったのですが「うるるスピリット浸透ツール」という位置付けで、スピリットに沿って評価項目が定義されています。
カルチャーを浸透させるために重要なこととは?
カルチャーを浸透させるには正しく言語化すること、様々な手段で発信することが大事だと考えています。以前から、代表が事あるごとにみんなの前で話したりブログで発信していたりしました。
これを続けていた事でカルチャーの浸透の基盤ができたことは間違いないと感じています。採用にもつながりますが、企業のブランディングとしてもブログ等でカルチャーの発信を続けていました。
採用時のカルチャーフィットはどう図っているのでしょうか?
採用の際は、候補者様の過去の経験を深掘りする「行動質問」に重きをおいています。
「チームワークを大切にしてきたか」「他人を思いやる気持ちはあるか」など、スピリットに沿った人材であるかを過去のお話を伺うことで確認しています。
未来のお話も伺いますが、過去のお話から再現性があるのか・良い悪いではなくうるるのカルチャーにフィットしてイキイキ働ける方なのか?という視点を最も大切にしています。
中途採用時はいかがでしょうか?
中途採用に限定した話ではないですが、うるるの採用は「ビジョン・スピリット共感型採用」と呼んでいます。
面接時や事前会社説明の場で、必ず「うるるスピリット」に触れており、うるるの選考を受け続けたいと思えるか否かの判断軸の一つにして頂きたいと、候補者様へお伝えしています。
本当に自分と価値観のあう会社なのか、無理せず自然と共感できることなのか。強制感なく、共通認識を持って働けることは双方の未来に関わる大きな部分であると捉えています。
採用時点のスピリット浸透
私がうるるに入社するよりも前の話にはなりますが、過去に大量採用をして組織が崩壊しかけたことがあるんです。
上場を目指していた時期で、人手が欲しかったというのはもちろん、とにかくスキルのみを重視して採用をしていました。
当時は今のような型化された質問や基準がなく、いわゆるフィーリング採用だったこと、加えて組織として大切にすべきことに目が向けられていなかった状態でした。
そんな背景もあり、現在は「エントリーマネジメント」に力を入れています。
エントリーマネジメントは企業創りで重要
会社の色や譲れない価値観は、積極的に打ち出していくべきだと考えています。
入社してからのミスマッチは候補者様・企業のどちらにとっても避けたいことです。自分自身、採用・採用広報に携わって2年ほど経った頃から、エントリーマネジメントの重要性を感じ始めました。
入社前に得た情報・与えられた体験は、間違いなく入社後に良くも悪くも効力が大きくなっていく。そんな組織作りにおける最重要ポイントがここにあるのではないかと考えています。
具体的な施策とは?
企業として、ブログは様々な内容を書いています。
- 社員紹介
- 社内イベント
- 代表ブログ
などを、広報部門と連携してアウトプットしています。
▼採用選考前に読んで頂きたいブログまとめ
昨年一番力を入れていたのは「人」についてです。コロナ禍でリモートワークが広がり、なかなか人との接点が持ち辛くなり、以前は社内で顔を合わせていたメンバーも中々会わなくなりましたよね。
だからこそ、その人が「どんな考えで働いているのか」「何を大事にしているのか」を取材し、記事にすることで社内外の人に伝えたいと考えました。
面接前に社員紹介を読んでもらうことで、どの人がどんな活躍をしているのかをわかってもらえるというメリットもあります。
様々な人を通じてカルチャーの発信ができるので、読んでいてもいろんな解釈ができて共感してもらいやすいと感じています。
また、自分自身もインタビューをすることで新たな価値観を持てて楽しいです。
まとめ
会社の分岐点で当たる課題の1つには、やはり今まで阿吽の呼吸でやってきたカルチャーや方針を言語化し、伝えていくことが重要だと感じました。成長過程にある会社であれば、組織と採用両方へ変化をもたせて、作り上げていく必要があると思います。
その中でも各社によってカラーが変わる分、人事という立場からどのような作用を起こしていけるかに尽きる印象でした。
組織拡大や採用に注力されている方へ参考になればと思います!