採用活動を行う中で、さまざまな手法やツールが増えていることと同時に、働き手の減少に伴う採用の激化があります。
特に中小・ベンチャー企業の有効求人倍率は高く、売り手市場であることに変化がありません。そのため採用担当及び人事として、経営視点を持った採用活動を行うことが重要となってきます。
今回は株式会社リアステージ 人事責任者より、今後の採用や人事としてあるべき姿について考察いただきました。
株式会社リアステージとは?
株式会社リアステージはVISIONに”働くをポジティブに。”を掲げ、未来を担う若者たちの働くをポジティブにするために、新卒紹介事業、就活イベント事業、中途紹介事業、SES事業など幅広く人材領域の事業を手掛けている企業です。
インタビュー協力者
執行役員 人事部長 辻 翔武
2014年度 新卒入社
経歴
2014年 不動産賃貸事業
2015年 新卒紹介事業部CA兼RA
2018年 人事部を兼任
2019年 人事責任者
2020年 グループ執行役員
2021年 イベント事業部兼任
実績
キャリアアドバイザー
年間180名 入社実績
人事部
新卒採用 毎年30名以上の採用
中途/リファラル採用 毎年10名以上の採用
22卒採用の振り返り
早期化したプレエントリー
HR総研×楽天みん就:2022年卒学生の就職活動動向調査(6月) 結果報告【就職活動編】によると、「「今年2月」までの割合が、年々増加傾向が顕著となっており、就職活動の早期化が継続していることがうかがえる。さらに、「前年12月以前」にプレエントリーした学生は50%で、20卒の27%より倍近くの割合となっている」と掲載しているように、就職活動の早期化が進んでおります。
コロナの影響を受け、早期から就職活動に取り掛かる学生が増えたものの、オンライン化の影響で多くの企業を見れるようになり、就職活動を長期で継続する就活生の数も増えているのが現状です。
長期化に伴い面接社数の増加や複数社内定がスタンダードとなり、人事の方々の採用力、選考フローの見直しが大きなテーマになり、就活生主導の採用活動が今後も加速していく傾向にあります。
23卒の採用動向
2022卒 新卒採用 企業調査(第1回)にて行われた調査では、企業の採用時期で早期対応を行う企業が20%超えに対して、昨年同様と答える企業が70%と、さほどスケジュールを変更しない企業の方が多いようです。
大企業が早期から採用活動を開始するからこそ、中小企業やベンチャー企業もそこに合わせて早期の採用活動を行い、優秀な学生と早期から接点を持ち、長期的な選考フローで長く就活生と接点を持ち続ける採用活動が求められてきています。
しかし就活生の活動は、早期から動き始める母数は増えており、Wantedlyが発表した「就職活動に関する調査」では、19%の就活生が内定を1社以上保有しているという状況です。これより始める企業であれば、同様にこれから就職活動を行おうと動き始めた学生と効率よく接触を図っていかなければ、内定保有率が向上することにより、就活生の行動量が緩やかになる可能性が上がり、そうすることによって母集団を形成しにくいことが予測されます。
年間スケジュールと選考フローの見直し、人事の方の労力が増加するからこそ、現場社員の協力を仰ぎながら会社全体で採用に注力していく必要性があります。
未来の新卒採用とは?
人事と社内メンバーとの関わり方
未来の採用活動は人事だけで行うものではなく、会社全体で行うべきことへと推移していくと予測しています。
その中で人事の役割が、採用活動をすることだけではなく、経営層が見据えた未来を言語化し、従業員を巻き込み落とし込んでいくことが重要になります。従業員全員が採用にコミットできる体制を整え、求職者・従業員をエンロールする巻き込み型人事が必要になります。
というのも採用人数や採用工数に対して、人事や採用担当者の人数が足りていないという課題が、中小・ベンチャーを中心に蔓延っております。とはいえ採用活動が止まることはないですし、どうにかターゲットの候補者を入社していただくための努力が必要です。そんな際に従業員を巻き込み、面接や面談などを行っていただいたり、リファラルやSNSなど裁量をもたせて行っていただく取り組みを始めました。
従業員と取り組む採用活動
採用活動の中でも、新卒・中途・長期インターンなど種類別の人事部と、採用手法のダイレクトリクルーティング、リファラル、SNSなどに応じて担当者、そして実際に面談などを担当する採用担当者などを細分化し、実務業務に負担がかからないような配慮をしながらリソースの確保を行なっております。
新卒採用/中途採用市場は、コロナの影響もあり今まで以上に求職者と企業の関わり方が近くなってきています。また新卒採用においては大手企業も早期化に対応してきているため、今まで以上に中小企業やベンチャー企業は採用が苦しくなり人事の方々の労力も増えてきているのが実態です。
その中で、従業員を巻き込むときに重要なことは以下です。
- 労力をかけない手法を考えるのではなく、会社全体で採用への意識を高めること
- SNS、リファラル採用の仕組みを作り、気軽に求職者と接点を持てる機会を作ること
- 待ちの採用ではなく、攻めの採用
実例 リファラル採用
リアステージでは、この2年ほどでリファラル採用が強化され、定着して参りました。約320名のエントリーそして27名の採用に至りました。リファラル採用を定着させるためのステップについてご紹介してまいります。
認知
- リファラル採用に力を入れる背景(理念/VISION)
- 会社としてのメリットの提示
会社を創るのは代表でも役員だけでもなく、働いている全員で創り上げていくものであることや、中長期的な経営に対して採用の重要性を、全社総会や朝礼、社内報などで発信することを努めました。
どれくらい自分事として捉えてもらえるのか、どのようにすればビジョン(パーパス)ドリブンな思考を持っていただけるのかを考え、誰から伝えるのか、どのように伝えるのかを心掛けてまいりました。
動機付け
- 自社に社員を紹介するメリットの提示
- インセンティブ/紹介特典/評価制度
認知段階で行動へ移す社員もおりますが、企業によっては動機付けも重要になります。リアステージでは、さまざまなメリットを用意してまいりました。導入してみて自社に合わないものや合うものが明確になった点や、最初のエンジンとして導入し現在は文化として定着したため、撤廃したことなど、導入してからわかったこともありました。
行動
- SNSを活用した発信
- 毎週の後追い
行動の面ではアウトプットしているか、できているか、意図的にしてもらうように促しておりました。改めて自社の良さや気づき、価値観などを各々の言葉にしていただくことが、帰属意識や自分事に捉えられるようになるため、言語化と内省化そしてアウトプットを心がけてもらいました。
実例 SNS採用
もう一つ全社的に取り組んだものとしては、SNS採用になります。上記のリファラル採用でもそうなのですが、各々が開設したアカウントにて求人情報やスカウトなどを依頼して、採用へつなげておりました。
主なSNSとしては、Twitter・Facebook・TikTok・Instagramこの4つを利用し、500名弱のエントリー、5名の内定承諾に至りました。
また採用活動として成功を収めただけではなく、離職率の防止に繋がり例年の3分の1まで下げることができました。他に帰属意識の向上、採用予算1000万以上のカットなど、あらゆる面でメリットを感じることができました。
まとめ
私が定義する採用力は
- 会社愛
- 企画力
- 実行力
- リーダーシップ
この4つを持ち合わせる方なのではないかと、思っております。会社愛はそのままの意味ですが、企画力は今後差別化を図る上で必要な素養になると思います。そして実行し、実行するためのメンバーを率いるリーダーシップ力が、採用成功につながるヒントだと思います。